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予備乾燥とは

予備乾燥とはどのような工程か

射出成形を行う前に材料を乾燥させることを予備乾燥と言います。

予備乾燥が必要な理由は、吸湿性を持つプラスチック原料には大気中の水分を吸湿しやすいという特性があり、水分を含んだまま成形を行うとさまざまな成形不良を引き起こすため。予備乾燥が不十分なまま成形を行った場合の成形不良には、気泡や銀状、ウェルドライン、くもり、透明度不良などがあげられます。

そのほか、強度や耐衝撃性の低下など成形品の品質にも影響するため、射出成形機に投入する前に吸湿した水分を取り除く予備乾燥の工程が重要となってくるのです。予備乾燥では主に箱型乾燥機が使用され、乾燥方法には熱風式、真空式、除湿式などがあります。

予備乾燥の条件

材料別で見る予備乾燥に必要な温度や時間の参考値は以下の通りです。

      
材料名 温度 時間(hr)
ポリカーボネート 120℃ 3~6
ポリブチレンテレフタレート 120~130℃ 3~6
ポリエチレンテレフタレート 130~150℃ 3~6
ポリミアド(PA6・PA66) 80℃(真空乾燥) 吸水率による
ポリスチレン 70~80℃ 2~4
ABS樹脂 80~90℃ 2~4
メタクリル樹脂 70~75℃ 2~4
変性PPE 100~115℃ 2~4
ポリアセタール 80~90℃ 2~4
ポリフェニレンスルフィド 130℃ 2~4
ポリエーテルエーテルケトン 150℃ 2~4

成形品に不良が生じない吸水率を限界吸水率と言い、予備乾燥では材料に応じた限界吸水率以下に乾燥することが求められます。材料は「厳密な乾燥を必要とする材料」「吸水率の高い材料」「厳密な乾燥を必要とする材料」「予備乾燥を必要としない材料」に分類され、同じ分類の材料なら必要な乾燥時間はほぼ同じです。ただし、乾燥温度は材料によって異なります。

材料別の乾燥条件

どのような材料が、「厳密な乾燥を必要とする材料」「吸水率の高い材料」「厳密な乾燥を必要とする材料」「予備乾燥を必要としない材料」に分類されるのかを解説。それぞれの材料の特徴や注意点、適した乾燥機の種類などを紹介します。

厳密な乾燥を必要とする材料

厳密な乾燥を必要とする材料には、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレートなどがあげられます。分子中に水分によって分解する結合(エステル結合)を有しており、成形時に水分によって分解する性質(加水分解)を持っているのが特徴です。

加水分解が起きると分子量が低下し、分解ガスが発生。それにより、気泡や銀条、強度低下などの成形不良を引き起こします。また、溶融粘度が変動することで成形性が不安定になるため、乾燥条件の厳密な管理が必要です。厳密な水分管理を必要とする場合は、除湿式乾燥機または除湿式ホッパードライヤーの使用が推奨されます。

吸水率の高い材料

吸水率の高い材料としては、ポリミアド系材料があげられます。一度吸水するとポリミアドと水分子が結合する性質があり、乾燥に時間がかかってしまいます。ポリミアドは水分によって加水分解することはないものの、ほかの樹脂に比べて吸水率が高いことから、銀条や気泡などが発生しやすいのが難点。そのため、水分管理には十分な注意が必要です。

また、成形のために防湿容器を開封したら、ホッパードライヤーや熱風循環式乾燥機に入れて速やかに成形することが推奨されています。吸湿してしまった材料の場合は、真空式乾燥機を使って比較的低めの80℃程度での乾燥がおすすめ。通常の乾燥方法だと時間がかかり、かと言って高温乾燥では変色する可能性があります。

厳密な乾燥を必要としない材料

厳密な乾燥を必要としない材料には、ポリスチレンやABS樹脂、メタクリル樹脂、変性PPE、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトンなどがあげられます。これらの材料は加水分解しないため、厳密な予備乾燥は必要ありません。通常の熱風循環乾燥機またはホッパードライヤーを使用して予備乾燥が行われます。

予備乾燥を必要としない材料

ポリエチレンやポリプロピレンは吸水性がほとんどないため、予備乾燥の必要はありません。ただし、吸水しやすい添加剤を含んでいたり、材料表面に結露が発生していたりする場合は、70~80℃程度の温度で数時間の予備乾燥を行う場合もあります。

予備乾燥に用いられる工業用乾燥機

熱風乾燥機

熱風乾燥機は熱風を材料に吹きかけて水分を蒸発させる装置で、主な熱風乾燥機にはホッパードライヤーと箱型乾燥炉があげられます。最も一般的で簡便な乾燥方法ですが、水分を十分に取り除きたいケースには適していません。

除湿熱風乾燥機

除湿熱風乾燥機は、空気中の水分をあらかじめ除湿し、そのあとで熱風を材料に吹きかけて水分を蒸発させる仕組みになっています。乾燥に使用した熱風を再循環させ、再度除湿して使用するため、熱損失の少ない合理的な乾燥が可能。ポリブチレンテレフタレートなどの乾燥を行うのに適した乾燥機です。

減圧伝熱式乾燥機

減圧伝熱式乾燥機は、減圧した環境下で使用し、材料に含まれる水分を伝熱によって蒸発させる方法が採用されています。低温での乾燥が可能なため、樹脂の酸化や材料に含まれる添加物への影響を抑えられるのが特徴。除湿熱風乾燥機と同様に熱損失の少ない乾燥機です。

⼯業⽤乾燥機のタイプ別⽐較表

半導体や各種薬品、食品など、自社商品の研究開発を目的とした工業用乾燥機には、様々なタイプが存在します。
ここでは代表的な5タイプについて、簡易的な比較表にまとめています。自社にはどのタイプが最適なのか、検討をしてみてください。

オンマウスで各項⽬の解説が表⽰されます
振動乾燥機

振動乾燥機はドラム型は缶体内に原料を投入し振動を行い、原料の流動化・乾燥を行う乾燥装置です。

攪拌乾燥機

攪拌式の乾燥機は、本体内部にあるパドルや羽根により原料を攪拌し、乾燥を行うタイプの乾燥機です。

真空回転乾燥機
(コニカルドライヤー)

真空回転乾燥機は、本体部分を密閉して減圧を行い、真空状態を作り出して原料を乾燥する構造の乾燥装置です。

箱型棚式
乾燥機

箱型棚式乾燥機はトレイに乾燥物を配置し、乾燥を行う構造の乾燥装置です。

流動層乾燥機

流動層乾燥機にはさまざまな形状があり、回転運動や振動、熱風などを利用し乾燥を行います。

材料適⽤
範囲

様々な種類・状態の材料に対応をしてるか。凝集性・付着性のある材料、水分量の多い材料、を苦手とする乾燥機も。

適⽤量

一度に乾燥を行う材料の適用量はどうか。

粒⼦破損

材料の粒子を破壊せずに乾燥ができるか。物理的な摩擦が少ないものが好ましい。

加熱温度

関節加熱の温度が高いほど乾燥速度は早まるが、内部構造が複雑な機器の場合、熱膨張の影響を受けやすいため、制限がかかる。

コンタミ
発⽣
リスク

乾燥機の内部での摩擦により、コンタミが発生するリスクがあるか。

洗浄時間

乾燥を行うごとに洗浄が必要な工業用乾燥機。内部構造が複雑な場合、解体が必要となるため、洗浄時間が長くなる。

消耗
部品

攪拌に羽を使用している、摩擦を起こすための部品が多い乾燥機の場合、消耗品の交換が必要となる。

特⻑ 上記項⽬に幅広く対応した上で、粒⼦がダマにならない 最も⼀般的な形式のため使い慣れている研究者が多い 高真空下で低温乾燥が可能なため、熱に弱い原料に向いている 食品乾燥など攪拌が必要のないものに 向いている 大量の原料の乾燥に適している
代表的な
製品(※)
中央化工機
VU型振動乾燥機
中央化工機振動乾燥機

引用元:中央化工機HP
(https://www.chuokakohki.co.jp/dryer.html)

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ヤスジマ
YVD真空撹拌乾燥機
イメージ

ヤスジマHP
(https://yasujima.co.jp/product/dryer/yvdn/)

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徳寿工作所
真空回転乾燥機 WDV型
イメージ

徳寿工作所HP
(https://www.tokujuk.co.jp/products/dryer/WDV/post-11.html)

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長門電機工作所
箱型棚式乾燥機
長門電機工作所箱型棚式乾燥機

引用元:長門電機工作所HP
(https://nagato.co.jp/ventilation-tray-dryer/)

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栗本鐵工所
流動層乾燥装置
栗本鐵工所流動層乾燥装置

引用元:栗本鐵工所HP
(https://www01.kurimoto.co.jp/co-lab/floormap/floor-03.html)

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※タイプ別の代表的な製品の選出基準
「振動乾燥機」「攪拌乾燥機」「真空回転乾燥機」「箱型棚式乾燥機」「流動層乾燥機」⇒2022年3月23日時点で各タイプ名をGoogle検索した際、最上位に表示されるメーカーの商品。