新しく工業用乾燥機を導入したいと考えた場合、常に自社で工業用乾燥機を購入する必要はなく、専門業者から工業用乾燥機をレンタルしたり、リース契約を利用したりするといった選択肢もあります。
自社で工業用乾燥機を購入する場合、自社の所有物となってランニングコストを抑えられますが、イニシャルコストが高額になりやすく、トータルの収支や維持管理を考えればレンタルやリースを利用する方が効率的というケースも少なくありません。
購入 | リース | レンタル | |
導入機器の選択肢 | 任意(自社で選定) | 基本的に任意(自社で選定) | レンタル会社の在庫 |
契約期間 | 自社所有の資産(使用可能期間) | 法定耐用年数の70%以上(使用可能期間) | レンタル会社との契約による |
所有権 | 購入者 | 契約者/リース会社 | レンタル会社 |
減価償却 | 購入者 | 契約者/リース会社 | レンタル会社 |
会計処理 | オンバランス(資産計上) | 契約内容による | オフバランス(経費処理) |
中途解約 | 不要 | 原則、不可 | 可能 |
月額料金 | なし(維持管理費は別) | 購入より割高、レンタルより割安 | リースより割高(レンタル期間により変動) |
期間満了後の取扱 | 自社資産として処理(法定耐用年数など) | 返却・再リース(期間延長) | 返却・再レンタル(期間延長) |
レンタルは文字通り工業用乾燥機をレンタル会社から借り受けて利用する方法です。レンタル可能な工業用乾燥機は、それぞれのレンタル会社が在庫として保有している機器から選ぶ必要があり、レンタル会社によってはニーズにマッチする機器が見つからない場合もあるでしょう。
レンタル料金はレンタル期間によっても変動し、一般的に長期のレンタルになるほど割安になります。またレンタル期間中も機器の所有権はレンタル会社にあり、会計処理はオフバランスとして対応します。
レンタルのメリットは、気軽に利用しやすいという点です。例えば短期間だけ工業用乾燥機を利用したい場合や、一時的な代替機として活用したいといった場合、レンタルを利用することでコストパフォーマンスを高められる可能性はあります。
会計処理も賃貸借契約としてオフバランスでシンプルに処理することが可能です。
長期にわたって工業用乾燥機を利用したい場合、コスト面でレンタルが最も割高になると想定されます。また工業用乾燥機の所有権はレンタル会社にあるため、もし作業員の故意や過失で機器を破損してしまった場合、修繕費や処分費などを契約者が負担しなければならない恐れもあるでしょう。
その他、選定可能な機器がレンタル会社の在庫に左右されます。
リース契約もリース会社から工業用乾燥機を借り受けるという点ではレンタルと似ていますが、リース契約には「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」という2種類があります。前者はリース会社がクライアントに代わって必要な機器を購入し、それを長期にわたって貸し出し、後者はレンタルに近いサービスです。
なお、中途契約ができなかったり、契約内容によって会計処理の方法が変わったりといった注意点もあります。
ファイナンス・リースはリース会社と相談して導入する機器を選定できるため、レンタル会社のように利用可能な機種が制限されることは原則としてありません。また長期間の利用になるためトータルのコスト面ではレンタルより割安になります。
自社購入の必要がなくイニシャルコストを抑えられ、リース期間が満了すれば新機種に変更することも可能です。
原則としてリース契約では期間中の中途解約はできません。仮に中途解約をするとしても、未経過リース料の支払いを求められる場合があります。また、レンタルよりも割安ですが、自社購入と比較するとトータルコストで割高になることはデメリットです。
その他、リース契約の内容によって会計処理が変わってしまう点に注意しなければなりません。
自社で必要な工業用乾燥機を購入し、資産として所有することが可能です。そのためレンタルやリースのように手数料などを支払う必要がなく、機器の維持管理にかかるランニングコストを除けば月額の支払いなどが不要です。
会計処理についても法定耐用年数にもとづいて減価償却費を計上していくため、処理の違いで混乱することもありません。反面、減価償却計算や償却資産税の申告といった事務手続きが必ず発生してしまうこともポイントです。
自社のニーズに最適な工業用乾燥機を資産として自社の所有物にすることができます。レンタルやリースの手数料が不要であり、新しい機器へ変更したい際にも契約期間などを気にせず新機種の導入を検討することができます。
不要な機種を売却・下取りすることで次の機種の導入コストを抑えられる可能性もあるでしょう。
本体の購入費や設置作業費などイニシャルコストが高額になりやすく、場合によってはローン会社や金融機関などからの借入が必要です。融資を受けた場合、当然ながら利息が発生するため、結果的にリースで手数料を支払うのと同じようになってしまう恐れもあります。
メンテナンスに関しても自社でメーカーなどのサポート契約を結ばなければなりません。
購入によって導入した工業用乾燥機の会計処理・税務処理は、イニシャルコストに対して対象機器の法定耐用年数に応じた減価償却などを計算して計上(オンバランス)します。またレンタル契約の場合は賃貸借処理(オフバランス)によって処理することが可能です。
一方、リース契約の場合はリース期間やリース金額、所有権の有無などによって会計処理が変わるため、適切に違いを把握しておかなければなりません。
賃貸借契約にもとづいて、毎月のレンタル料を支払い、それをオフバランスとして賃貸借処理します。
工業用乾燥機の導入にかかったイニシャルコストは、全額を購入年度にオンバランスで経費計上するのでなく、法定耐用年数に応じた減価償却計算を行って毎年の経費として計上します。
なお、減価償却の対象になる工業用乾燥機には固定資産税の1種である償却資産税が課せられる点に注意してください。
リース契約に関しては、2008年に「リース取引に関する会計基準」が改正されたことにより、契約内容によって会計処理の方法が変わってしまう点が重要です。
ファイナンス・リースの中でも、工業用乾燥機の所有権が自社に移転されている場合、自社購入と同様の売買処理となります。そのためリース資産とリース債務をオンバランスで計上し、法定耐用年数にもとづいて減価償却を行います。
リース会社に対象物の所有権がある場合、リース資産やリース債務をオンバランスで処理する際、減価償却に「リース期間定額法」という特殊な方法を適用しなければなりません。
なお利息相当額は利息法や定額法によって、リース料から分離して処理してください。
賃貸借処理としてオフバランスの扱いになり、リース料は減価償却費として計上します。固定資産台帳の管理も不要です。
自社が中小企業に該当する場合、2008年の「リース取引に関する会計基準」の適用外になります。そのため中小企業における会計処理は、中小企業会計指針に則り、所有権移転外ファイナンス・リースも賃貸借処理(オフバランス)で扱うことが可能です。
半導体や各種薬品、食品など、自社商品の研究開発を目的とした工業用乾燥機には、様々なタイプが存在します。
ここでは代表的な5タイプについて、簡易的な比較表にまとめています。自社にはどのタイプが最適なのか、検討をしてみてください。
振動乾燥機
振動乾燥機はドラム型は缶体内に原料を投入し振動を行い、原料の流動化・乾燥を行う乾燥装置です。 |
攪拌乾燥機
攪拌式の乾燥機は、本体内部にあるパドルや羽根により原料を攪拌し、乾燥を行うタイプの乾燥機です。 |
真空回転乾燥機 (コニカルドライヤー) 真空回転乾燥機は、本体部分を密閉して減圧を行い、真空状態を作り出して原料を乾燥する構造の乾燥装置です。 |
箱型棚式 乾燥機 箱型棚式乾燥機はトレイに乾燥物を配置し、乾燥を行う構造の乾燥装置です。 |
流動層乾燥機
流動層乾燥機にはさまざまな形状があり、回転運動や振動、熱風などを利用し乾燥を行います。 |
|
---|---|---|---|---|---|
材料適⽤ 範囲 様々な種類・状態の材料に対応をしてるか。凝集性・付着性のある材料、水分量の多い材料、を苦手とする乾燥機も。 |
広い 幅広く対応 本体部分は真空状態になるため、様々な材料に対応。また、外に空気が漏れないため、人体に有害なものやナノ粒子状なども対応可能です。 |
広い 幅広く対応 本体部分は閉じられた状態になるため、様々な材料に対応。 |
広い 幅広く対応 本体部分は真空状態になるため、様々な材料に対応。 |
狭い 凝集性・付着性のある材料は苦手 攪拌が行われないため、凝集性・付着性のある材料に適用しない。 |
狭い 凝集性・付着性のある材料不可 攪拌が行われないため、凝集性・付着性のある材料に適用しない。また、水分を多量に含んだものも苦手とする。 |
適⽤量
一度に乾燥を行う材料の適用量はどうか。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩
材料を水平に並べる構造上、大量の材料を乾燥させる際には広いスペースが必要となる。 |
大
大量の材料の乾燥に適用したタイプの乾燥機。 |
粒⼦破損
材料の粒子を破壊せずに乾燥ができるか。物理的な摩擦が少ないものが好ましい。 |
少ない
振動による攪拌のため、機器による摩擦を発生させない。 |
有り
攪拌の際に機器による摩擦が発生しやすい。 |
少ない
回転による攪拌のため、機器による摩擦を発生させない。 |
少ない
攪拌を行わないため、機器による摩擦を発生させない。 |
有り
攪拌の際に機器による摩擦が発生しやすい。 |
加熱温度
関節加熱の温度が高いほど乾燥速度は早まるが、内部構造が複雑な機器の場合、熱膨張の影響を受けやすいため、制限がかかる。 |
高温域 (250度以下) 内部構造がシンプルなため、高温での過熱が可能。 |
中温域 (190度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
中温域 (190度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
高温域 (250度以下) 内部構造がシンプルなため、高温での過熱が可能。 |
低温域 (160度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
コンタミ 発⽣ リスク 乾燥機の内部での摩擦により、コンタミが発生するリスクがあるか。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
高い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こるため、コンタミが発生するリスクが高い。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
高い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こるため、コンタミが発生するリスクが高い。 |
洗浄時間
乾燥を行うごとに洗浄が必要な工業用乾燥機。内部構造が複雑な場合、解体が必要となるため、洗浄時間が長くなる。 |
短い
内部構造がシンプルなため、洗浄時間が短い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
短い
内部構造がシンプルなため、洗浄時間が短い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
消耗 部品 攪拌に羽を使用している、摩擦を起こすための部品が多い乾燥機の場合、消耗品の交換が必要となる。 |
少ない
消耗品はほとんどない。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
少ない
消耗品はほとんどない。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
特⻑ | 上記項⽬に幅広く対応した上で、粒⼦がダマにならない | 最も⼀般的な形式のため使い慣れている研究者が多い | 高真空下で低温乾燥が可能なため、熱に弱い原料に向いている | 食品乾燥など攪拌が必要のないものに 向いている | 大量の原料の乾燥に適している |
代表的な 製品(※) |
中央化工機
VU型振動乾燥機 |
ヤスジマ
YVD真空撹拌乾燥機 |
徳寿工作所
真空回転乾燥機 WDV型 |
長門電機工作所
箱型棚式乾燥機 |
栗本鐵工所
流動層乾燥装置 |
※タイプ別の代表的な製品の選出基準
「振動乾燥機」「攪拌乾燥機」「真空回転乾燥機」「箱型棚式乾燥機」「流動層乾燥機」⇒2022年3月23日時点で各タイプ名をGoogle検索した際、最上位に表示されるメーカーの商品。