真空環境下での乾燥やベーキング処理に対応した装置は、電子部品や精密機器、医薬品などの分野で幅広く利用されています。ここでは、佐藤真空が提供する真空乾燥装置について、代表的な3シリーズの特徴を紹介します。メーカーの特徴もまとめているので、ぜひ参考にしてください。

引用元:佐藤真空公式HP
(https://www.satovac.co.jp/products/vacuum_equipment/baking/index.html)
DQシリーズは、研究開発や少量生産向けのスタンダードな真空乾燥装置で、操作のしやすさと安全性に配慮された汎用タイプです。到達圧力は×10¹Paオーダーで、油回転真空ポンプを用いた高真空での加熱処理に対応しています。
小型の卓上タイプ(DQ-S)やポンプ組込み型(DQ-P)などがあり、設置環境やスペースに応じて選べる構成が特徴です。温度は200℃まで(オプションで最大600℃対応可能)、PID制御による温度調整機能を備えており、操作もデジタルで簡単です。
安全対策としては、二重過熱防止回路や停電時の保護機能などが備えられており、安心して運用できます。主に、電池・電極、半導体部品、セラミック、食品などの乾燥処理や実験用途に使われています。

引用元:佐藤真空公式HP
(https://www.satovac.co.jp/products/vacuum_equipment/baking/index.html)
DYシリーズは、生産現場向けの全自動型真空乾燥装置で、操作性・耐久性・温度精度に配慮されたモデルです。到達圧力は1Pa(DY-P)または×10⁰Pa(DY-MP)で、排気速度や真空度の違いに応じて2タイプから選択可能です。
最大加熱温度は650℃まで対応可能で、内部加熱方式(棚板加熱)により昇温時間が短縮され、温度分布も安定。ヒーターは各段で個別に制御され、温度制御の正確さと加熱効率に優れています。
操作はプログラム化されており、スタートボタンで真空排気から昇温・冷却まで自動で制御されます。大型グラフィックパネルにより運転状況も一目で確認でき、異常検出時の安全停止機能も搭載されています。電気・電子機器部品や金属材料のベーキング、食品や医薬品の乾燥などに適しています。

引用元:佐藤真空公式HP
(https://www.satovac.co.jp/products/vacuum_equipment/baking/index.html)
DHシリーズは、高真空・高温処理に対応した最上位モデルです。排気系には油拡散ポンプ(DH-DP)またはターボ分子ポンプ(DH-TP)が使われており、クリーンな高真空環境での加熱処理が可能です。到達圧力はDH-DPで×10⁻³Pa、DH-TPでは×10⁻⁴Paと、特にクリーン度が求められる用途に向いています。
加熱は内部ヒーターによる棚板加熱方式で、PID制御による正確な温度調整が可能。高真空中での加熱処理を効率的に行える構造となっており、オプションの強制冷却機能を使えば処理時間の短縮も可能です。
操作は全自動で、グラフィックパネルによるモニタリングや、各種安全保護機能も充実。精密機器部品、電子材料、レーザー機器部品など、高精度が求められる真空ベーキングや乾燥処理に対応しています。
佐藤真空は、創業から90年にわたり真空ポンプや真空機器の設計・製造を手がける専業メーカーです。研究開発や製造現場で必要とされる「クリーンな真空環境」を提供することを使命とし、精密加工からアフターサービスまでを社内で一貫して対応。産業分野では、半導体・電池・医療・食品・自動車など広範な分野に納入実績があります。
特に、真空ポンプや周辺機器を活かしたタフな真空装置の製作に注力し、乾燥・熱処理・含浸・脱泡など、多彩な装置をオーダーメイドで提供しています。装置の構造設計から試作・評価まで一つのチームで対応するため、用途に合った柔軟なカスタマイズが可能です。
半導体や各種薬品、食品など、自社商品の研究開発を目的とした工業用乾燥機には、様々なタイプが存在します。
ここでは代表的な5タイプについて、簡易的な比較表にまとめています。自社にはどのタイプが最適なのか、検討をしてみてください。
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振動乾燥機
振動乾燥機はドラム型は缶体内に原料を投入し振動を行い、原料の流動化・乾燥を行う乾燥装置です。 |
攪拌乾燥機
攪拌式の乾燥機は、本体内部にあるパドルや羽根により原料を攪拌し、乾燥を行うタイプの乾燥機です。 |
真空回転乾燥機 (コニカルドライヤー) 真空回転乾燥機は、本体部分を密閉して減圧を行い、真空状態を作り出して原料を乾燥する構造の乾燥装置です。 |
箱型棚式 乾燥機 箱型棚式乾燥機はトレイに乾燥物を配置し、乾燥を行う構造の乾燥装置です。 |
流動層乾燥機
流動層乾燥機にはさまざまな形状があり、回転運動や振動、熱風などを利用し乾燥を行います。 |
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材料適⽤ 範囲 様々な種類・状態の材料に対応をしてるか。凝集性・付着性のある材料、水分量の多い材料、を苦手とする乾燥機も。 |
広い 幅広く対応 本体部分は真空状態になるため、様々な材料に対応。また、外に空気が漏れないため、人体に有害なものやナノ粒子状なども対応可能です。 |
広い 幅広く対応 本体部分は閉じられた状態になるため、様々な材料に対応。 |
広い 幅広く対応 本体部分は真空状態になるため、様々な材料に対応。 |
狭い 凝集性・付着性のある材料は苦手 攪拌が行われないため、凝集性・付着性のある材料に適用しない。 |
狭い 凝集性・付着性のある材料不可 攪拌が行われないため、凝集性・付着性のある材料に適用しない。また、水分を多量に含んだものも苦手とする。 |
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適⽤量
一度に乾燥を行う材料の適用量はどうか。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩
材料を水平に並べる構造上、大量の材料を乾燥させる際には広いスペースが必要となる。 |
大
大量の材料の乾燥に適用したタイプの乾燥機。 |
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粒⼦破損
材料の粒子を破壊せずに乾燥ができるか。物理的な摩擦が少ないものが好ましい。 |
少ない
振動による攪拌のため、機器による摩擦を発生させない。 |
有り
攪拌の際に機器による摩擦が発生しやすい。 |
少ない
回転による攪拌のため、機器による摩擦を発生させない。 |
少ない
攪拌を行わないため、機器による摩擦を発生させない。 |
有り
攪拌の際に機器による摩擦が発生しやすい。 |
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加熱温度
関節加熱の温度が高いほど乾燥速度は早まるが、内部構造が複雑な機器の場合、熱膨張の影響を受けやすいため、制限がかかる。 |
高温域 (250度以下) 内部構造がシンプルなため、高温での過熱が可能。 |
中温域 (190度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
中温域 (190度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
高温域 (250度以下) 内部構造がシンプルなため、高温での過熱が可能。 |
低温域 (160度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
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コンタミ 発⽣ リスク 乾燥機の内部での摩擦により、コンタミが発生するリスクがあるか。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
高い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こるため、コンタミが発生するリスクが高い。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
高い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こるため、コンタミが発生するリスクが高い。 |
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洗浄時間
乾燥を行うごとに洗浄が必要な工業用乾燥機。内部構造が複雑な場合、解体が必要となるため、洗浄時間が長くなる。 |
短い
内部構造がシンプルなため、洗浄時間が短い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
短い
内部構造がシンプルなため、洗浄時間が短い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
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消耗 部品 攪拌に羽を使用している、摩擦を起こすための部品が多い乾燥機の場合、消耗品の交換が必要となる。 |
少ない
消耗品はほとんどない。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
少ない
消耗品はほとんどない。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
| 特⻑ | 上記項⽬に幅広く対応した上で、粒⼦がダマにならない | 最も⼀般的な形式のため使い慣れている研究者が多い | 高真空下で低温乾燥が可能なため、熱に弱い原料に向いている | 食品乾燥など攪拌が必要のないものに 向いている | 大量の原料の乾燥に適している |
| 代表的な 製品(※) |
中央化工機
VU型振動乾燥機 ![]() 引用元:中央化工機HP |
ヤスジマ
YVD真空撹拌乾燥機 ![]() ヤスジマHP |
徳寿工作所
真空回転乾燥機 WDV型 ![]() 徳寿工作所HP |
長門電機工作所
箱型棚式乾燥機 ![]() 引用元:長門電機工作所HP |
栗本鐵工所
流動層乾燥装置 ![]() 引用元:栗本鐵工所HP |
※タイプ別の代表的な製品の選出基準
「振動乾燥機」「攪拌乾燥機」「真空回転乾燥機」「箱型棚式乾燥機」「流動層乾燥機」⇒2022年3月23日時点で各タイプ名をGoogle検索した際、最上位に表示されるメーカーの商品。