工業用乾燥機は、食品や化学、製薬、バイオマス発電、汚泥処理など、さまざまな業界で用いられています。自然界に存在する素材をもとに、乾燥(加工)して活用可能なものをつくりだすのが工業用乾燥機であり、幅広い業種において重要な役割を担っています。
また、ひとくちに工業用乾燥機といっても種類はさまざまであり、バンド式乾燥機やトンネル乾燥機、箱型乾燥機、ロータリー式乾燥機などがあります。乾燥したい対象物や用途、目的に応じて選ぶ必要があります。
食品用の乾燥機は多岐にわたります。たとえば野菜や果物、キノコ、海産物、お茶、香辛料など。その他にもナッツ類やおから、アルファ米、ビーフジャーキーなども乾燥実績があります。乾燥方法としては熱風乾燥や冷風乾燥、減圧乾燥、フリーズドライ、遠赤外線乾燥などが挙げられます。
特定の食品に対応した特殊な乾燥機を開発しているメーカーもあり、対象物に合わせた乾燥方法で効率よく乾燥しています。
また、乾燥させたい食品が大量の場合は連続式の食品乾燥機などを使用するケースも。ジェット噴射式加熱などを用いて高速で乾燥を行います。
化学品(化成品)の乾燥工程でも工業用乾燥機が使われています。化学品には樹脂や化学肥料、繊維状材料、凝集性材料、チクソトロピック剤などが挙げられます。たとえば製造工程において、樹脂に水分が含まれていると成形品質の低下を招きます。そこで乾燥機を用いて適度に乾燥させることで、品質の安定につなげているのです。
ただ、ひとくちに化学品といってもその形状や性質はさまざまであり、乾燥目的や特性に応じた乾燥機を選ぶ必要があります。
製薬向けの乾燥機もあります。医薬品の乾燥ではコンタミのリスクを抑えて乾燥させる必要があるほか、サニタリー性や汎用性にも優れた乾燥機でなければなりません。品質や清潔度を保持したまま乾燥させなければならず、クリーンルーム内で使用されることもあります。
このように製薬用途では密閉性などが重要になることから、箱型棚式乾燥機や真空回転乾燥機(コニカルドライヤー)などが主に用いられています。
下水処理や工業廃水などで発生する汚泥も、工業用乾燥機によって処理されています。汚泥は脱水工程を行ってから処理処分されていますが、含水率が多いと資源化や処分が難しいといわれています。
そこで汚泥乾燥機で汚泥を乾燥させることで、汚泥の減量化や再資源化が可能。汚泥が乾燥菌体肥料や副産複合肥料・汚泥肥料などとして活用されるようになるのです。
汚泥の乾燥方法には直接乾燥方式と間接乾燥方式がありますが、間接乾燥方式では有機物を多く含んだまま乾燥させることが可能。農業などでの利用に役立っています。
バイオマスとは、動植物を由来とした有機物である資源のことです。バイオマスは燃焼しても二酸化炭素を増加させない性質をしていることから、エネルギーとしての利用が注目されています。
バイオマスを燃料として使うには、十分に乾燥させることが重要です。含水率の高い燃料だと燃焼中の利用可能なエネルギーは低くなり、効率的に使用できません。また、含水率の高い燃料だと不完全燃焼をたびたび起こし、有害物質などを含む排ガスをより多く放出することになります。
そのため、乾燥機の使用はバイオマス燃料の含水率の減少や環境負荷の軽減に有用です。
研究や実験で、サンプルを乾燥させたいときに活躍するのが研究用乾燥機です。卓上タイプのコンパクトな仕様のものが多く、少量のサンプルを乾燥、加熱、コーティング、造粒処理したい際に適しています。研究工程に合わせてプログラムを作成できる高性能な乾燥機や機能を追加できる乾燥機もあり、用途に合わせて選ぶことが大切です。
ここでは、研究用乾燥機の用途や乾燥機でできること、選ぶ際のポイントをまとめました。
貴社が乾燥したい対象物はどんなものでしょうか。工業用乾燥機を用いて効率よく乾燥させるためには、対象物に合った乾燥機を選ぶことが大切です。乾燥機にはさまざまな種類があるうえ、メーカーや製品によって特長が異なるため、自社に合った製品を見極めましょう。
当サイトでは工業用乾燥機のタイプ別比較が可能ですから、メーカーや製品選びの参考にしてみてください。
半導体や各種薬品、食品など、自社商品の研究開発を目的とした工業用乾燥機には、様々なタイプが存在します。
ここでは代表的な5タイプについて、簡易的な比較表にまとめています。自社にはどのタイプが最適なのか、検討をしてみてください。
振動乾燥機
振動乾燥機はドラム型は缶体内に原料を投入し振動を行い、原料の流動化・乾燥を行う乾燥装置です。 |
攪拌乾燥機
攪拌式の乾燥機は、本体内部にあるパドルや羽根により原料を攪拌し、乾燥を行うタイプの乾燥機です。 |
真空回転乾燥機 (コニカルドライヤー) 真空回転乾燥機は、本体部分を密閉して減圧を行い、真空状態を作り出して原料を乾燥する構造の乾燥装置です。 |
箱型棚式 乾燥機 箱型棚式乾燥機はトレイに乾燥物を配置し、乾燥を行う構造の乾燥装置です。 |
流動層乾燥機
流動層乾燥機にはさまざまな形状があり、回転運動や振動、熱風などを利用し乾燥を行います。 |
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材料適⽤ 範囲 様々な種類・状態の材料に対応をしてるか。凝集性・付着性のある材料、水分量の多い材料、を苦手とする乾燥機も。 |
広い 幅広く対応 本体部分は真空状態になるため、様々な材料に対応。また、外に空気が漏れないため、人体に有害なものやナノ粒子状なども対応可能です。 |
広い 幅広く対応 本体部分は閉じられた状態になるため、様々な材料に対応。 |
広い 幅広く対応 本体部分は真空状態になるため、様々な材料に対応。 |
狭い 凝集性・付着性のある材料は苦手 攪拌が行われないため、凝集性・付着性のある材料に適用しない。 |
狭い 凝集性・付着性のある材料不可 攪拌が行われないため、凝集性・付着性のある材料に適用しない。また、水分を多量に含んだものも苦手とする。 |
適⽤量
一度に乾燥を行う材料の適用量はどうか。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩
材料を水平に並べる構造上、大量の材料を乾燥させる際には広いスペースが必要となる。 |
大
大量の材料の乾燥に適用したタイプの乾燥機。 |
粒⼦破損
材料の粒子を破壊せずに乾燥ができるか。物理的な摩擦が少ないものが好ましい。 |
少ない
振動による攪拌のため、機器による摩擦を発生させない。 |
有り
攪拌の際に機器による摩擦が発生しやすい。 |
少ない
回転による攪拌のため、機器による摩擦を発生させない。 |
少ない
攪拌を行わないため、機器による摩擦を発生させない。 |
有り
攪拌の際に機器による摩擦が発生しやすい。 |
加熱温度
関節加熱の温度が高いほど乾燥速度は早まるが、内部構造が複雑な機器の場合、熱膨張の影響を受けやすいため、制限がかかる。 |
高温域 (250度以下) 内部構造がシンプルなため、高温での過熱が可能。 |
中温域 (190度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
中温域 (190度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
高温域 (250度以下) 内部構造がシンプルなため、高温での過熱が可能。 |
低温域 (160度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
コンタミ 発⽣ リスク 乾燥機の内部での摩擦により、コンタミが発生するリスクがあるか。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
高い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こるため、コンタミが発生するリスクが高い。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
高い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こるため、コンタミが発生するリスクが高い。 |
洗浄時間
乾燥を行うごとに洗浄が必要な工業用乾燥機。内部構造が複雑な場合、解体が必要となるため、洗浄時間が長くなる。 |
短い
内部構造がシンプルなため、洗浄時間が短い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
短い
内部構造がシンプルなため、洗浄時間が短い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
消耗 部品 攪拌に羽を使用している、摩擦を起こすための部品が多い乾燥機の場合、消耗品の交換が必要となる。 |
少ない
消耗品はほとんどない。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
少ない
消耗品はほとんどない。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
特⻑ | 上記項⽬に幅広く対応した上で、粒⼦がダマにならない | 最も⼀般的な形式のため使い慣れている研究者が多い | 高真空下で低温乾燥が可能なため、熱に弱い原料に向いている | 食品乾燥など攪拌が必要のないものに 向いている | 大量の原料の乾燥に適している |
代表的な 製品(※) |
中央化工機
VU型振動乾燥機 ![]() 引用元:中央化工機HP |
ヤスジマ
YVD真空撹拌乾燥機 ![]() ヤスジマHP |
徳寿工作所
真空回転乾燥機 WDV型 ![]() 徳寿工作所HP |
長門電機工作所
箱型棚式乾燥機 ![]() 引用元:長門電機工作所HP |
栗本鐵工所
流動層乾燥装置 ![]() 引用元:栗本鐵工所HP |
※タイプ別の代表的な製品の選出基準
「振動乾燥機」「攪拌乾燥機」「真空回転乾燥機」「箱型棚式乾燥機」「流動層乾燥機」⇒2022年3月23日時点で各タイプ名をGoogle検索した際、最上位に表示されるメーカーの商品。