有機物は有機化合物とも呼ばれ、炭素を含む化合物の大部分を指します。炭素原子が共有結合された骨格を持ち、分子間力によって集まることで液体や固体となっているため、沸点・融点が低いものが多いのが特徴です。
温度変化や乾燥方法によって原料の質が変わってしまう可能性があるため、どのような乾燥方法を採用するかじっくり検討する必要があります。
有機物の中で乾燥機を用いる原料は、医薬品・農薬・染料・顔料・各種有機工業薬品などがあります。有機物のための乾燥機は、使用する原料に適した乾燥方法を行うことができるかどうかがポイントになります。
具体的には、低温から高温までの幅広い温度帯で乾燥させられるか、原料の状態に影響を与えてしまう異物が混入しないかどうか、液体のようなスラリー状やペースト状でも乾燥することができるかを基準に選ぶとよいでしょう。
医薬品は、人間や動物の病気治療や予防のために投与される物資をいいます。
飲む・塗る・注射するなどの接種方法があり、医薬品は国家資格を持った医師の診察によって処方される「処方箋医薬品」と、薬局で買うことができる「一般用医薬品」に区別されます。
人体や動物に投与されるため、温度管理や衛生管理に注意しながら乾燥を行う必要があります。
食料品の乾燥は加工や保存のために行われることが多く、野菜や果物、穀物類、豆類、パン粉、調味料、魚粉などさまざまな食品に対して行われています。
熱風乾燥や冷風乾燥、減圧乾燥・フリーズドライ・遠赤外線など、さまざまな方式で乾燥させることがあり、食品の温度による品質変化や水分量に留意しながら乾燥を行いましょう。
化学肥料は、無機物を科学的な加工により、人工的に作った肥料をいいます。
主要成分である窒素・リン酸・カリを適切な配分で含有しており、利用しやすく安価であることが特徴です。輸送や保存などにかかる費用も安価のため、多くの農家によって利用されています。
温度や乾燥時間の管理をしっかりと行える、かつ目的別による乾燥効率のコントロールや、乾燥ムラの防止にも対応しているかを考慮して乾燥機を選定しましょう。
染料は、繊維などに色をつける際に用いられる、色素となる物質のことです。もともとは藍や茜といった天然の染料が用いられていましたが、現在では科学的に作られた合成染料も多くなっています。
染料の対象となる材料は多岐にたわり、繊維のみならず、プラスチックやゴム、医薬品、紙などにも使用されています。
同じような目的で使用される顔料もありますが、こちらは水に溶けない特性があるため、それぞれの特徴を踏まえて適切な乾燥が行える乾燥機を選定しましょう。
有機物はほとんどの乾燥機で対応が可能です。その形状や加工する量によって、乾燥機を選べば基本的には問題ありません。
ただし、有機化合物の乾燥を行う場合は乾燥機の密封性が重要です。人体に害を与える薬品が乾燥機の外に出ないよう、密閉状態や真空状態となる乾燥機を選ぶ必要があります。
また、食品加工の場合も、衛生レベルの高さを売りとする乾燥機を選ぶのが無難です。
半導体や各種薬品、食品など、自社商品の研究開発を目的とした工業用乾燥機には、様々なタイプが存在します。
ここでは代表的な5タイプについて、簡易的な比較表にまとめています。自社にはどのタイプが最適なのか、検討をしてみてください。
振動乾燥機
振動乾燥機はドラム型は缶体内に原料を投入し振動を行い、原料の流動化・乾燥を行う乾燥装置です。 |
攪拌乾燥機
攪拌式の乾燥機は、本体内部にあるパドルや羽根により原料を攪拌し、乾燥を行うタイプの乾燥機です。 |
真空回転乾燥機 (コニカルドライヤー) 真空回転乾燥機は、本体部分を密閉して減圧を行い、真空状態を作り出して原料を乾燥する構造の乾燥装置です。 |
箱型棚式 乾燥機 箱型棚式乾燥機はトレイに乾燥物を配置し、乾燥を行う構造の乾燥装置です。 |
流動層乾燥機
流動層乾燥機にはさまざまな形状があり、回転運動や振動、熱風などを利用し乾燥を行います。 |
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材料適⽤ 範囲 様々な種類・状態の材料に対応をしてるか。凝集性・付着性のある材料、水分量の多い材料、を苦手とする乾燥機も。 |
広い 幅広く対応 本体部分は真空状態になるため、様々な材料に対応。また、外に空気が漏れないため、人体に有害なものやナノ粒子状なども対応可能です。 |
広い 幅広く対応 本体部分は閉じられた状態になるため、様々な材料に対応。 |
広い 幅広く対応 本体部分は真空状態になるため、様々な材料に対応。 |
狭い 凝集性・付着性のある材料は苦手 攪拌が行われないため、凝集性・付着性のある材料に適用しない。 |
狭い 凝集性・付着性のある材料不可 攪拌が行われないため、凝集性・付着性のある材料に適用しない。また、水分を多量に含んだものも苦手とする。 |
適⽤量
一度に乾燥を行う材料の適用量はどうか。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩
材料を水平に並べる構造上、大量の材料を乾燥させる際には広いスペースが必要となる。 |
大
大量の材料の乾燥に適用したタイプの乾燥機。 |
粒⼦破損
材料の粒子を破壊せずに乾燥ができるか。物理的な摩擦が少ないものが好ましい。 |
少ない
振動による攪拌のため、機器による摩擦を発生させない。 |
有り
攪拌の際に機器による摩擦が発生しやすい。 |
少ない
回転による攪拌のため、機器による摩擦を発生させない。 |
少ない
攪拌を行わないため、機器による摩擦を発生させない。 |
有り
攪拌の際に機器による摩擦が発生しやすい。 |
加熱温度
関節加熱の温度が高いほど乾燥速度は早まるが、内部構造が複雑な機器の場合、熱膨張の影響を受けやすいため、制限がかかる。 |
高温域 (250度以下) 内部構造がシンプルなため、高温での過熱が可能。 |
中温域 (190度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
中温域 (190度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
高温域 (250度以下) 内部構造がシンプルなため、高温での過熱が可能。 |
低温域 (160度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
コンタミ 発⽣ リスク 乾燥機の内部での摩擦により、コンタミが発生するリスクがあるか。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
高い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こるため、コンタミが発生するリスクが高い。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
高い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こるため、コンタミが発生するリスクが高い。 |
洗浄時間
乾燥を行うごとに洗浄が必要な工業用乾燥機。内部構造が複雑な場合、解体が必要となるため、洗浄時間が長くなる。 |
短い
内部構造がシンプルなため、洗浄時間が短い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
短い
内部構造がシンプルなため、洗浄時間が短い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
消耗 部品 攪拌に羽を使用している、摩擦を起こすための部品が多い乾燥機の場合、消耗品の交換が必要となる。 |
少ない
消耗品はほとんどない。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
少ない
消耗品はほとんどない。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
特⻑ | 上記項⽬に幅広く対応した上で、粒⼦がダマにならない | 最も⼀般的な形式のため使い慣れている研究者が多い | 高真空下で低温乾燥が可能なため、熱に弱い原料に向いている | 食品乾燥など攪拌が必要のないものに 向いている | 大量の原料の乾燥に適している |
代表的な 製品(※) |
中央化工機
VU型振動乾燥機 |
ヤスジマ
YVD真空撹拌乾燥機 |
徳寿工作所
真空回転乾燥機 WDV型 |
長門電機工作所
箱型棚式乾燥機 |
栗本鐵工所
流動層乾燥装置 |
※タイプ別の代表的な製品の選出基準
「振動乾燥機」「攪拌乾燥機」「真空回転乾燥機」「箱型棚式乾燥機」「流動層乾燥機」⇒2022年3月23日時点で各タイプ名をGoogle検索した際、最上位に表示されるメーカーの商品。