さまざまな原料の乾燥を行うにあたり、乾燥機の形態や性能、大きさによって取り扱える原料の状態が異なります。
スラリーや水溶液といった液体状のもの、ペレットや粘土状のような個体、細かい粉体の素材など、さまざまな形態の原料・製品があります。
ここでは原料の状態別の特徴や乾燥の際の注意点などについて紹介します。
ドライ粉体は、固形の原料を粉砕したものや液体状の原料を粉末状に加工したものをいいます。
食品や医薬品、金属粉など、さまざまな原料にドライ粉体のものがあり、飛散がしやすい・重量が軽い・表面積割合が大きいといった特徴があります。
個体の微粒子が無数に近い状態で集合している粉体のうち、ウェットなものをウェット粉末といいます。
ドライ粉末と比較すると飛散性がなく取り扱いやすい特徴をもつ原料で、食品や医薬品などさまざまな分野で取り扱われています。
ナノ粒子、ある物質を100ナノメートル未満の大きさの粒子にしたものをいいます。
比重面積が極めて大きいことや、量子サイズ効果によって特有の物性を示すなど、通常のサイズの原料と性質が異なるため、さまざまな分野での研究・利用が進められています。
ペレットは一般的に小さい塊状のものをいい、一般的に3mmから5mm程度の粒子状にされたものや、数mmから数cm程度の円筒状に加工されたものなどがあります。
さまざまな工業製品などに利用されることが多い素材の形態です。
粘土とは粘り気のある土のことをいい、そのような状態の素材を粘土状といいます。
粘土状の原料は、モノの材料に使われるような素材よりも、産業廃棄物などの処理を目的とした汚泥などが取り扱われることが多いです。
ケーキ状とは、汚泥処理や医薬品製剤などの分野において使われる表現です。
大量の水分を含む汚泥などの水分をできるだけ取り除いた上で脱水を行い、廃泥の状態になったものをいいます。
スラリーは液体中に粘土などの個体粒子が含まれ、流動体になっている状態のものをいいます。
ドロドロとした流動体で、製造業や土木分野など、工業分野で多く使われています。
水溶液は物質が水に溶解した状態の液体をいい、水以外を溶媒、例えばエタノールを溶媒とする場合には「エタノール溶剤」などといわれ区別されます。
溶質となる物質を水に溶融させると物質が変化する可能性があるなど、取り扱いに注意が必要な原料の一つです。
繊維状には、大きく分けて天然由来の「天然繊維」と化学的に加工した「化学繊維」があります。
乾燥の際には、繊維の含水率や構造などに注意した上で行わなくてはなりません。乾燥したい繊維にはどのような特徴があるかを把握しておきましょう。
PCやスマートフォン、ゲームなど電子機器の中の部品として使われる基板。乾燥前の洗浄ワークの工程によって、さまざまな乾燥方法に分かれます。
洗浄溶媒を高速回転させて遠心力で落とし、ある程度の水滴を取り去ってから乾燥段階に入る方法をとると、低コストで効率よく乾燥できます。
シート状素材とは、繊維や不織布、ペーパーなど薄い板状で平らな素材を指します。濡れてしまったシートを効率よく乾かすには、まず吸湿材などで湿りを取り除くことが重要です。
その後、熱風を吹き付ける方法や高周波・マイクロ波で加熱して乾燥させる方法など、さまざまな乾燥の仕方があります。
棒状の素材にはパスタや素麺のような乾麺から、割り箸や建材など大小様々な木製素材、あるいは金属加工に用いる金属棒や溶接棒、その他にも塩ビ製パイプのような円筒状製品まで様々な種類があります。そのため棒状素材の乾燥工程に工業用乾燥機を導入する場合、目的とする棒状素材の特性に合致した乾燥機を選ばなければなりません。
半導体や各種薬品、食品など、自社商品の研究開発を目的とした工業用乾燥機には、様々なタイプが存在します。
ここでは代表的な5タイプについて、簡易的な比較表にまとめています。自社にはどのタイプが最適なのか、検討をしてみてください。
振動乾燥機
振動乾燥機はドラム型は缶体内に原料を投入し振動を行い、原料の流動化・乾燥を行う乾燥装置です。 |
攪拌乾燥機
攪拌式の乾燥機は、本体内部にあるパドルや羽根により原料を攪拌し、乾燥を行うタイプの乾燥機です。 |
真空回転乾燥機 (コニカルドライヤー) 真空回転乾燥機は、本体部分を密閉して減圧を行い、真空状態を作り出して原料を乾燥する構造の乾燥装置です。 |
箱型棚式 乾燥機 箱型棚式乾燥機はトレイに乾燥物を配置し、乾燥を行う構造の乾燥装置です。 |
流動層乾燥機
流動層乾燥機にはさまざまな形状があり、回転運動や振動、熱風などを利用し乾燥を行います。 |
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材料適⽤ 範囲 様々な種類・状態の材料に対応をしてるか。凝集性・付着性のある材料、水分量の多い材料、を苦手とする乾燥機も。 |
広い 幅広く対応 本体部分は真空状態になるため、様々な材料に対応。また、外に空気が漏れないため、人体に有害なものやナノ粒子状なども対応可能です。 |
広い 幅広く対応 本体部分は閉じられた状態になるため、様々な材料に対応。 |
広い 幅広く対応 本体部分は真空状態になるため、様々な材料に対応。 |
狭い 凝集性・付着性のある材料は苦手 攪拌が行われないため、凝集性・付着性のある材料に適用しない。 |
狭い 凝集性・付着性のある材料不可 攪拌が行われないため、凝集性・付着性のある材料に適用しない。また、水分を多量に含んだものも苦手とする。 |
適⽤量
一度に乾燥を行う材料の適用量はどうか。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩
材料を水平に並べる構造上、大量の材料を乾燥させる際には広いスペースが必要となる。 |
大
大量の材料の乾燥に適用したタイプの乾燥機。 |
粒⼦破損
材料の粒子を破壊せずに乾燥ができるか。物理的な摩擦が少ないものが好ましい。 |
少ない
振動による攪拌のため、機器による摩擦を発生させない。 |
有り
攪拌の際に機器による摩擦が発生しやすい。 |
少ない
回転による攪拌のため、機器による摩擦を発生させない。 |
少ない
攪拌を行わないため、機器による摩擦を発生させない。 |
有り
攪拌の際に機器による摩擦が発生しやすい。 |
加熱温度
関節加熱の温度が高いほど乾燥速度は早まるが、内部構造が複雑な機器の場合、熱膨張の影響を受けやすいため、制限がかかる。 |
高温域 (250度以下) 内部構造がシンプルなため、高温での過熱が可能。 |
中温域 (190度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
中温域 (190度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
高温域 (250度以下) 内部構造がシンプルなため、高温での過熱が可能。 |
低温域 (160度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
コンタミ 発⽣ リスク 乾燥機の内部での摩擦により、コンタミが発生するリスクがあるか。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
高い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こるため、コンタミが発生するリスクが高い。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
高い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こるため、コンタミが発生するリスクが高い。 |
洗浄時間
乾燥を行うごとに洗浄が必要な工業用乾燥機。内部構造が複雑な場合、解体が必要となるため、洗浄時間が長くなる。 |
短い
内部構造がシンプルなため、洗浄時間が短い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
短い
内部構造がシンプルなため、洗浄時間が短い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
消耗 部品 攪拌に羽を使用している、摩擦を起こすための部品が多い乾燥機の場合、消耗品の交換が必要となる。 |
少ない
消耗品はほとんどない。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
少ない
消耗品はほとんどない。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
特⻑ | 上記項⽬に幅広く対応した上で、粒⼦がダマにならない | 最も⼀般的な形式のため使い慣れている研究者が多い | 高真空下で低温乾燥が可能なため、熱に弱い原料に向いている | 食品乾燥など攪拌が必要のないものに 向いている | 大量の原料の乾燥に適している |
代表的な 製品(※) |
中央化工機
VU型振動乾燥機 ![]() 引用元:中央化工機HP |
ヤスジマ
YVD真空撹拌乾燥機 ![]() ヤスジマHP |
徳寿工作所
真空回転乾燥機 WDV型 ![]() 徳寿工作所HP |
長門電機工作所
箱型棚式乾燥機 ![]() 引用元:長門電機工作所HP |
栗本鐵工所
流動層乾燥装置 ![]() 引用元:栗本鐵工所HP |
※タイプ別の代表的な製品の選出基準
「振動乾燥機」「攪拌乾燥機」「真空回転乾燥機」「箱型棚式乾燥機」「流動層乾燥機」⇒2022年3月23日時点で各タイプ名をGoogle検索した際、最上位に表示されるメーカーの商品。