乾燥機を使用する上で起こる可能性のある主なトラブルは、以下の3つです。
まず挙げられるのが乾燥機の故障です。電源を入れても乾燥機が動かない場合、故障が考えられます。故障の原因となる可能性に、ファンの故障やモーターコイルの損傷、内部インバーターの故障が挙げられます。
修理が必要な場合、保証期間内であればメーカーが規定に従って修理してくれます。保証期間が過ぎている場合の故障については、メーカーや専門業者への相談が必要です。
乾燥するまでの時間が長い場合、乾燥機に対象物を詰め込みすぎているか、対象物を載せるトレーが曲がってしまっている、もしくは設置ミスによって外部へ空気が漏れていることが考えられます。また、モーターは動くものの温度が上がらず乾燥しない場合、内部に断線が起きていたりヒーターが故障していたりすると考えられます。
乾燥機のトラブルで最も危険なのが、乾燥機の爆発です。通気口や排気口付近に燃えやすいものを置いたり可燃性の異物を入れてしまったりすると、爆発や火災が起こる可能性があり重大事故の原因となります。過剰な連続使用や詰め込みすぎもNG。安全に稼働するように正しく使用することが重要です。
ここからは、乾燥機を使用していて実際に起きた事故やトラブルの事例を紹介していきます。安全に稼働するためにも、ぜひ参考にしてください。
岐阜県にある医薬品製造工場で、ビタミン剤を乾燥中に気化したエタノールが電気火花に引火。着火して爆発事故が起きました。
エタノールを乾燥中、乾燥設備に取り付けた排気装置がうまく稼働しておらず、エタノールが滞留して電気火花に引火したことが原因です。製薬工場でエタノールを使用することは珍しいことではありませんが、常温では可燃性混合気を作るため、通常の乾燥設備で乾燥させてはいけません。
通常の乾燥機ではなく、爆発放散口などを備えた危険物に対応できる乾燥設備を使用することで爆発を防げます。また、電気機器自体が着火源とならないよう、防爆型の電気設備を備えることが重要です。
医薬品製造工場の生産ラインで、調合したビタミン剤の顆粒を乾燥する作業中、乾燥設備が爆発しました。この影響で乾燥室の天井や扉なども吹き飛び、工場内にいた作業者が被災した被害も出ています。
この爆発事故の主な原因は設備不良です。使用開始時の点検も行われておらず、排気装置が故障していたことに気づかないまま稼働させたことにあります。
乾燥設備を使用する前には、システムが機能しているかを必ず確認することが大切です。また、危険物乾燥設備を設置する際には爆発戸や爆発孔などを設け、万が一の爆発事故の際に備えることで被害を最小限に抑えることができます。
香川県の発泡剤の製造工場で、12%含水の粉体を真空乾燥する工程で爆発事故が起こりました。回転羽根で攪拌しながら乾燥作業を進め、おおむね乾燥が終了したので外側ジャケットに通す温水を加熱するための蒸気のバルブを閉めたところ、約10分後に爆発が起こったとされています。
攪拌機のシャフトシールのグランドパッキンの締付けが強すぎて発熱したことが爆発の主な原因です。
シャフトシールのグランドパッキンの締付け過ぎは、現場で過熱の問題が知られていました。これをもとにグランドパッキンの締付けについて統一を図る、常に温度検出を行うなど、日常的な危険予知活動によって防げた事象です。
三重県の化学工場で、薬品の合成後に装置のアルカリ洗浄と水洗浄を行い再び稼働させたところ、大量のガスが発生し、上部マンホールからガスが漏れて室内に充満しました。
その後、マンホールが外れて大量にガスが漏れ、マンホールが飛散したときの衝撃で火花が発生。ガス噴出による静電気や製品の自然発火も影響して爆発を起こしています。
装置のアルカリ洗浄後、水洗浄を行ったにもかかわらず、使用していた成分が残存していたためにその成分が化学反応を起こし、事故が起きたと言われています。
乾燥機へのアルカリの存在は、重縮合反応の引き金となるため、乾燥機のアルカリ洗浄を禁止することで防げた事例です。また、運転する従業員や管理者に適切な教育を施し、知識を備えておけば防げます。
宮崎県の化学工場で電気雷管用起爆薬を製造していたところ、造粒を乾燥中に爆発事故が起こりました。
乾燥機の部品にひびが入っており、そこから侵入した起爆薬が摩擦などで発火して爆ごうに転移したか、鉄サビが混入して摩擦感度が増大し、発火・燃焼したと思われます。
乾燥機は稼働前の日常点検や定期点検が重要です。特に経年によって設備に劣化が見られる場合、異物が混入しないか、鉄サビが発生していないかを十分にチェックし、異物の発生や混入を防ぐことで事故を予防できます。
秋田県にある工場の米ぬか乾燥装置で乾燥機の改造工事を行っていたところ、試運転中に乾燥装置の鉄製ドラムが突然破裂。近くにいた作業員2名が重軽傷を負いました。
改造工事の設計に誤りがあり、構造上不良が生じたことが原因です。充填したキャスターを十分に乾燥させないで閉じたため、水分が膨張して水蒸気爆発が起こりました。
装置の開発時には、思わぬ設計・構造不良から事故につながる場合があるため、十分な注意が必要です。
半導体や各種薬品、食品など、自社商品の研究開発を目的とした工業用乾燥機には、様々なタイプが存在します。
ここでは代表的な5タイプについて、簡易的な比較表にまとめています。自社にはどのタイプが最適なのか、検討をしてみてください。
振動乾燥機
振動乾燥機はドラム型は缶体内に原料を投入し振動を行い、原料の流動化・乾燥を行う乾燥装置です。 |
攪拌乾燥機
攪拌式の乾燥機は、本体内部にあるパドルや羽根により原料を攪拌し、乾燥を行うタイプの乾燥機です。 |
真空回転乾燥機 (コニカルドライヤー) 真空回転乾燥機は、本体部分を密閉して減圧を行い、真空状態を作り出して原料を乾燥する構造の乾燥装置です。 |
箱型棚式 乾燥機 箱型棚式乾燥機はトレイに乾燥物を配置し、乾燥を行う構造の乾燥装置です。 |
流動層乾燥機
流動層乾燥機にはさまざまな形状があり、回転運動や振動、熱風などを利用し乾燥を行います。 |
|
---|---|---|---|---|---|
材料適⽤ 範囲 様々な種類・状態の材料に対応をしてるか。凝集性・付着性のある材料、水分量の多い材料、を苦手とする乾燥機も。 |
広い 幅広く対応 本体部分は真空状態になるため、様々な材料に対応。また、外に空気が漏れないため、人体に有害なものやナノ粒子状なども対応可能です。 |
広い 幅広く対応 本体部分は閉じられた状態になるため、様々な材料に対応。 |
広い 幅広く対応 本体部分は真空状態になるため、様々な材料に対応。 |
狭い 凝集性・付着性のある材料は苦手 攪拌が行われないため、凝集性・付着性のある材料に適用しない。 |
狭い 凝集性・付着性のある材料不可 攪拌が行われないため、凝集性・付着性のある材料に適用しない。また、水分を多量に含んだものも苦手とする。 |
適⽤量
一度に乾燥を行う材料の適用量はどうか。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩
材料を水平に並べる構造上、大量の材料を乾燥させる際には広いスペースが必要となる。 |
大
大量の材料の乾燥に適用したタイプの乾燥機。 |
粒⼦破損
材料の粒子を破壊せずに乾燥ができるか。物理的な摩擦が少ないものが好ましい。 |
少ない
振動による攪拌のため、機器による摩擦を発生させない。 |
有り
攪拌の際に機器による摩擦が発生しやすい。 |
少ない
回転による攪拌のため、機器による摩擦を発生させない。 |
少ない
攪拌を行わないため、機器による摩擦を発生させない。 |
有り
攪拌の際に機器による摩擦が発生しやすい。 |
加熱温度
関節加熱の温度が高いほど乾燥速度は早まるが、内部構造が複雑な機器の場合、熱膨張の影響を受けやすいため、制限がかかる。 |
高温域 (250度以下) 内部構造がシンプルなため、高温での過熱が可能。 |
中温域 (190度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
中温域 (190度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
高温域 (250度以下) 内部構造がシンプルなため、高温での過熱が可能。 |
低温域 (160度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
コンタミ 発⽣ リスク 乾燥機の内部での摩擦により、コンタミが発生するリスクがあるか。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
高い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こるため、コンタミが発生するリスクが高い。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
高い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こるため、コンタミが発生するリスクが高い。 |
洗浄時間
乾燥を行うごとに洗浄が必要な工業用乾燥機。内部構造が複雑な場合、解体が必要となるため、洗浄時間が長くなる。 |
短い
内部構造がシンプルなため、洗浄時間が短い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
短い
内部構造がシンプルなため、洗浄時間が短い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
消耗 部品 攪拌に羽を使用している、摩擦を起こすための部品が多い乾燥機の場合、消耗品の交換が必要となる。 |
少ない
消耗品はほとんどない。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
少ない
消耗品はほとんどない。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
特⻑ | 上記項⽬に幅広く対応した上で、粒⼦がダマにならない | 最も⼀般的な形式のため使い慣れている研究者が多い | 高真空下で低温乾燥が可能なため、熱に弱い原料に向いている | 食品乾燥など攪拌が必要のないものに 向いている | 大量の原料の乾燥に適している |
代表的な 製品(※) |
中央化工機
VU型振動乾燥機 |
ヤスジマ
YVD真空撹拌乾燥機 |
徳寿工作所
真空回転乾燥機 WDV型 |
長門電機工作所
箱型棚式乾燥機 |
栗本鐵工所
流動層乾燥装置 |
※タイプ別の代表的な製品の選出基準
「振動乾燥機」「攪拌乾燥機」「真空回転乾燥機」「箱型棚式乾燥機」「流動層乾燥機」⇒2022年3月23日時点で各タイプ名をGoogle検索した際、最上位に表示されるメーカーの商品。