工業用乾燥機にはさまざまな乾燥方法があり、乾燥させたい素材や条件、環境によって用いる方法は異なります。乾燥方法の違いで製造工程の効率性や品質にも関わってくるため、いかに適した乾燥方法を選べるかが大切です。
温風乾燥は、温風(熱風)を素材に吹き付けて乾燥するシンプルな方法です。
電気やガス、ガソリン、灯油などの燃料を使用したバーナーやヒーターで熱をおこし、送風機で風を送って乾燥させます。人工的な乾燥方法の中では最も一般的に使われており、主に食品などの乾燥に用いられるほか、コインランドリーの乾燥機なども温風乾燥の原理が使われています。
シンプルな方法なので低コストで乾燥できますが、製品や乾燥温度によっては時間がかかる場合があります。
また、製品の表面の水分が完全に無くなってしまうので、ひび割れが起こるデメリットも。素材に対して均一に熱風があたらないと、不均一な仕上がりになる場合もあります。
流動層乾燥とは、乾燥させたい素材に熱風をあて、気流中で浮遊させながら乾燥させる方法です。主に種子や粒状のものを乾燥させるのに使われており、スープや穀類、豆類などを顆粒状にするために用いられます。
流動層乾燥では、層内で熱風と原料が激しく混ざり合うため、熱の伝達が早いのが特徴です。これにより、品質の劣化や乾燥ムラを防ぎながら乾燥できます。気流中で素材を浮遊させるため層内の温度が均一に保たれやすく、調節しやすいのがメリットです。
構造がシンプルで安定運転がしやすいため、大量の素材を乾燥させたい際に適しています。
大型の真空ポンプに素材を入れ、減圧することで水分を蒸発させて乾燥させる方法で、減圧乾燥とも呼ばれます。気圧が低いと液体の沸点が下がるという原理が利用されており、低い温度でも素材の水分を蒸発させられます。
また、真空環境下では、液体が気化するときに、液体が膨張したり表面ににじみ出たりします。そのため、素材の熱が届きにくい部分や液体が滲み込んだ内部までしっかりと乾き、短時間で効率よく乾燥させることが可能です。
素材の水分を凍結させたまま乾燥する方法です。通常の乾燥方法では液体を蒸発させて乾燥させるのに対し、凍結乾燥は固体が凍結したまま気体に変わる「昇華」という形で乾燥されます。
低温乾燥では成分の変化がほとんどなく、色や香り、味、栄養価をキープできることから、食品の乾燥に使われています。豆腐を屋外で凍らせた後に乾燥させる昔ながらの「凍り豆腐」も、この原理を用いて自然乾燥させたものです。
凍結乾燥は医薬品の薬液の乾燥などにも用いられており、凍結から仕上げまで2段階工程に分けて乾燥が行われます。
「凍結乾燥」と同じく、固体の昇華作用を利用して、低温・低圧の環境下で乾燥させる方法です。フリーズドライとも呼ばれており、お湯をかけると食べられるインスタント食品で馴染みのある方も多いでしょう。
真空凍結乾燥では、乾燥させたいものを急速冷凍して乾燥室内を少しずつ減圧し、真空状態にします。色や成分に変化が少なく、復元性が高い点がメリットですが、専用の機械が必要なため導入コストは高めです。
低温乾燥とは、15~35℃の低温で湿度の低い空気中で乾燥する方法です。外気に影響されないよう密閉した室内で乾燥するのが特徴で、年間を通して昼夜問わず均一な商品を製造できるようになります。
できあがった製品をそのまま冷蔵保存状態にもできるため、水産物や野菜、果実など低温下での保存に適した食品の乾燥に多く用いられます。ちなみに、温度帯が18℃~32℃に限られるものは冷風乾燥と呼ばれる場合もあります。
真空乾燥と同じく、圧力によって効率よく水分を蒸発させるのが加圧・減圧乾燥です。密閉された容器内で素材を加熱・加圧して、急激に常圧に戻すことで気圧差を生み、瞬間的に水分を蒸発させて乾燥させます。
スナック菓子などの膨化食品の製造にも用いられる方法です。早く乾燥できるメリットがある一方で、原料の水分の多さによっては膨化の程度が均一でなく、仕上がりが不均一になるデメリットもあります。
素材に温風や熱風を当てず、常温の風で水分を除去するのが通風乾燥です。水分差のある素材を乾燥させたいとき用いる方法で、一度風をあてることで水分差が少なくなり、全体を効率よく乾燥させられるようになります。
水分差のある状態で熱風や温風をあててしまうと、乾燥度合いにムラが出て製品にひび割れなどが起きやすくなります。品質の劣化を防ぐためのプロセスとして、米や穀物の乾燥ではこの通風乾燥が用いられます。
熱ではなく、高温の熱源から発せられる「遠赤外線」を照射して素材を乾燥させる方法です。特定の波長を照射すると蒸発させたいものだけを効率的に乾燥できるため、塗装や工業製品の乾燥など溶媒だけを乾燥させたい際に用いられます。
熱風に比べて加熱速度に優れるほか、低温乾燥だとダメージを受けてしまう素材の乾燥に適しています。
強力なファンで槽内の空気を吸引し、循環させて一部を排気して乾燥させる方法です。条件によっては熱風乾燥よりも乾燥時間が早いため、大量に乾燥させたい場合に向いています。
熱風と吸引を同時に行うことで、より乾燥効率を高めることも可能です。ただし、通常の乾燥機よりも音が大きいほか、吸引ファンの選定には注意が必要です。
原料の液体を熱風中に噴霧して、瞬時に水分を飛ばして乾燥させる方法で、スプレードライとも呼ばれます。噴霧乾燥を行うと液体のろ過や脱水、乾燥、粉砕、分級の工程を短縮することができます。
そのため、液体から乾燥粉末を取り出したい際に選ばれており、化学品や医薬、食品など様々な業界で広く使われています。ただし、装置が大型で高価なため、導入コストは高くなります。
微生物が有機物を分解する過程で発する熱によって乾燥させる方法です。汚泥や廃棄物などを処理するために多く用いられており、多くの場合、発酵を促すために素材を撹拌しながら発酵させていきます。
通気乾燥や太陽光などを組み合わせることによって、より乾燥効率が高まるほか、低コスト、省エネルギーで乾燥できる方法としても知られています。
太陽の光を当てて乾燥させる、最も古典的な方法です。野菜や果物、肉、魚など、生鮮食品を長期保存するための知恵として古くから用いられてきました。
自然乾燥はコストをかけずに簡単にできる方法ですが、天候に左右されやすく品質にムラが起こりやすい、また、成分変化を起こしやすいデメリットがあります。また、乾燥効率が低いわりに場所をとる、手間がかかるのも難点です。
半導体や各種薬品、食品など、自社商品の研究開発を目的とした工業用乾燥機には、様々なタイプが存在します。
ここでは代表的な5タイプについて、簡易的な比較表にまとめています。自社にはどのタイプが最適なのか、検討をしてみてください。
振動乾燥機
振動乾燥機はドラム型は缶体内に原料を投入し振動を行い、原料の流動化・乾燥を行う乾燥装置です。 |
攪拌乾燥機
攪拌式の乾燥機は、本体内部にあるパドルや羽根により原料を攪拌し、乾燥を行うタイプの乾燥機です。 |
真空回転乾燥機 (コニカルドライヤー) 真空回転乾燥機は、本体部分を密閉して減圧を行い、真空状態を作り出して原料を乾燥する構造の乾燥装置です。 |
箱型棚式 乾燥機 箱型棚式乾燥機はトレイに乾燥物を配置し、乾燥を行う構造の乾燥装置です。 |
流動層乾燥機
流動層乾燥機にはさまざまな形状があり、回転運動や振動、熱風などを利用し乾燥を行います。 |
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材料適⽤ 範囲 様々な種類・状態の材料に対応をしてるか。凝集性・付着性のある材料、水分量の多い材料、を苦手とする乾燥機も。 |
広い 幅広く対応 本体部分は真空状態になるため、様々な材料に対応。また、外に空気が漏れないため、人体に有害なものやナノ粒子状なども対応可能です。 |
広い 幅広く対応 本体部分は閉じられた状態になるため、様々な材料に対応。 |
広い 幅広く対応 本体部分は真空状態になるため、様々な材料に対応。 |
狭い 凝集性・付着性のある材料は苦手 攪拌が行われないため、凝集性・付着性のある材料に適用しない。 |
狭い 凝集性・付着性のある材料不可 攪拌が行われないため、凝集性・付着性のある材料に適用しない。また、水分を多量に含んだものも苦手とする。 |
適⽤量
一度に乾燥を行う材料の適用量はどうか。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩
材料を水平に並べる構造上、大量の材料を乾燥させる際には広いスペースが必要となる。 |
大
大量の材料の乾燥に適用したタイプの乾燥機。 |
粒⼦破損
材料の粒子を破壊せずに乾燥ができるか。物理的な摩擦が少ないものが好ましい。 |
少ない
振動による攪拌のため、機器による摩擦を発生させない。 |
有り
攪拌の際に機器による摩擦が発生しやすい。 |
少ない
回転による攪拌のため、機器による摩擦を発生させない。 |
少ない
攪拌を行わないため、機器による摩擦を発生させない。 |
有り
攪拌の際に機器による摩擦が発生しやすい。 |
加熱温度
関節加熱の温度が高いほど乾燥速度は早まるが、内部構造が複雑な機器の場合、熱膨張の影響を受けやすいため、制限がかかる。 |
高温域 (250度以下) 内部構造がシンプルなため、高温での過熱が可能。 |
中温域 (190度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
中温域 (190度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
高温域 (250度以下) 内部構造がシンプルなため、高温での過熱が可能。 |
低温域 (160度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
コンタミ 発⽣ リスク 乾燥機の内部での摩擦により、コンタミが発生するリスクがあるか。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
高い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こるため、コンタミが発生するリスクが高い。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
高い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こるため、コンタミが発生するリスクが高い。 |
洗浄時間
乾燥を行うごとに洗浄が必要な工業用乾燥機。内部構造が複雑な場合、解体が必要となるため、洗浄時間が長くなる。 |
短い
内部構造がシンプルなため、洗浄時間が短い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
短い
内部構造がシンプルなため、洗浄時間が短い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
消耗 部品 攪拌に羽を使用している、摩擦を起こすための部品が多い乾燥機の場合、消耗品の交換が必要となる。 |
少ない
消耗品はほとんどない。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
少ない
消耗品はほとんどない。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
特⻑ | 上記項⽬に幅広く対応した上で、粒⼦がダマにならない | 最も⼀般的な形式のため使い慣れている研究者が多い | 高真空下で低温乾燥が可能なため、熱に弱い原料に向いている | 食品乾燥など攪拌が必要のないものに 向いている | 大量の原料の乾燥に適している |
代表的な 製品(※) |
中央化工機
VU型振動乾燥機 |
ヤスジマ
YVD真空撹拌乾燥機 |
徳寿工作所
真空回転乾燥機 WDV型 |
長門電機工作所
箱型棚式乾燥機 |
栗本鐵工所
流動層乾燥装置 |
※タイプ別の代表的な製品の選出基準
「振動乾燥機」「攪拌乾燥機」「真空回転乾燥機」「箱型棚式乾燥機」「流動層乾燥機」⇒2022年3月23日時点で各タイプ名をGoogle検索した際、最上位に表示されるメーカーの商品。