乾燥機にはさまざまな種類がありますが、定期的なメンテナンスによってトラブルや故障を防げます。ここでは、乾燥機別のメンテナンスや工業用乾燥機で起こりやすいトラブルについて紹介します。
振動乾燥機で主にメンテナンスが必要な部分は「駆動部」です。下記に、振動乾燥機のメンテナンス例を紹介します。
真空状態で乾燥を行うコニカル型(円錐型)の乾燥機にも、定期的なメンテナンスが必要です。真空回転乾燥機内のオイルシールあたり面の摩耗・劣化、軸部分やホイールの摩耗・劣化、ギアの摩耗などが考えられます。機器ごとに提示されている定期整備の目安を参考にし、稼働後の年数や使用時間に応じたメンテナンススケジュールを立てましょう。
そもそも乾燥機が作動しない、モーターが作動しない、また温度が上がらないといったトラブルが考えられます。その場合は、電源プラグがきちんと差し込まれているか・電源が入っているかを確認しましょう。
内部の断線やヒータの故障が考えられます。事故防止のため直ちに電源を切り、電源プラグをコンセントから抜いてください。その後メーカーへ問い合わせましょう。
乾燥に時間がかかってしまう場合、乾燥機に対象物を詰め込みすぎている可能性があります。また、対象物を載せるトレーに曲がりが生じている・設置ミスによって外部へ空気が漏れている場合にも乾燥が遅くなります。そのため、乾燥させる対象物の量を適正にし、正常なトレーを正しく設置しましょう。
もしも量やトレーに問題がなくモーターがゆっくり作動している場合は機械トラブルの可能性があります。すぐに電源を切り、メーカーサポートへ相談しましょう。
温度が適切にコントロールされていない可能性があります。すぐに電源を切り、メーカーサポートへ問い合わせましょう。
対象物の厚さが均一でない・大きさに差がある場合は乾燥ムラができやすくなります。また、乾燥機に対象物を詰め込みすぎている場合にも乾燥ムラが生じます。対象物の厚みや大きさを均一にし、適正量を入れましょう。
モーターベアリングの摩耗が考えられます。事故や故障を防ぐため、すぐに電源を切りメーカーサポートへ問い合わせましょう。
乾燥機の事故で多いのが「爆発事故」です。対象物を乾燥させる乾燥機では、対象物の特性や静電気の発生によって火災や爆発のリスクが高くなっています。
また、メンテナンス不足によって乾燥機に塵埃が堆積し爆発事故を引き起こした事例も。定期的なメンテナンスを怠らないようにし、異常を感じた際にはすぐに使用を中止しましょう。
工場で洗浄液として用いていた有機溶剤がダクト内で爆発してしまい、ダクトが損傷するだけでなく乾燥機内の製品が焼損したケースです。原因として、静電気を発生しやすい素材であり、かつ乾燥機自体に静電気発生・帯電の防止措置を行っていない状況でした。さらに乾燥機からつながるダクト内の清掃も行き届いておらず、最終的にはダクト内にあった繊維くずに着火して火災・爆発が発生しています。今後の取り組みとして、工場では年に1度の定期的な自主検査を実施し、静電気の発生防止や設備の清掃を徹底するなどの対策を講じるとしています。
半導体や各種薬品、食品など、自社商品の研究開発を目的とした工業用乾燥機には、様々なタイプが存在します。
ここでは代表的な5タイプについて、簡易的な比較表にまとめています。自社にはどのタイプが最適なのか、検討をしてみてください。
振動乾燥機
振動乾燥機はドラム型は缶体内に原料を投入し振動を行い、原料の流動化・乾燥を行う乾燥装置です。 |
攪拌乾燥機
攪拌式の乾燥機は、本体内部にあるパドルや羽根により原料を攪拌し、乾燥を行うタイプの乾燥機です。 |
真空回転乾燥機 (コニカルドライヤー) 真空回転乾燥機は、本体部分を密閉して減圧を行い、真空状態を作り出して原料を乾燥する構造の乾燥装置です。 |
箱型棚式 乾燥機 箱型棚式乾燥機はトレイに乾燥物を配置し、乾燥を行う構造の乾燥装置です。 |
流動層乾燥機
流動層乾燥機にはさまざまな形状があり、回転運動や振動、熱風などを利用し乾燥を行います。 |
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材料適⽤ 範囲 様々な種類・状態の材料に対応をしてるか。凝集性・付着性のある材料、水分量の多い材料、を苦手とする乾燥機も。 |
広い 幅広く対応 本体部分は真空状態になるため、様々な材料に対応。また、外に空気が漏れないため、人体に有害なものやナノ粒子状なども対応可能です。 |
広い 幅広く対応 本体部分は閉じられた状態になるため、様々な材料に対応。 |
広い 幅広く対応 本体部分は真空状態になるため、様々な材料に対応。 |
狭い 凝集性・付着性のある材料は苦手 攪拌が行われないため、凝集性・付着性のある材料に適用しない。 |
狭い 凝集性・付着性のある材料不可 攪拌が行われないため、凝集性・付着性のある材料に適用しない。また、水分を多量に含んだものも苦手とする。 |
適⽤量
一度に乾燥を行う材料の適用量はどうか。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩
材料を水平に並べる構造上、大量の材料を乾燥させる際には広いスペースが必要となる。 |
大
大量の材料の乾燥に適用したタイプの乾燥機。 |
粒⼦破損
材料の粒子を破壊せずに乾燥ができるか。物理的な摩擦が少ないものが好ましい。 |
少ない
振動による攪拌のため、機器による摩擦を発生させない。 |
有り
攪拌の際に機器による摩擦が発生しやすい。 |
少ない
回転による攪拌のため、機器による摩擦を発生させない。 |
少ない
攪拌を行わないため、機器による摩擦を発生させない。 |
有り
攪拌の際に機器による摩擦が発生しやすい。 |
加熱温度
関節加熱の温度が高いほど乾燥速度は早まるが、内部構造が複雑な機器の場合、熱膨張の影響を受けやすいため、制限がかかる。 |
高温域 (250度以下) 内部構造がシンプルなため、高温での過熱が可能。 |
中温域 (190度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
中温域 (190度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
高温域 (250度以下) 内部構造がシンプルなため、高温での過熱が可能。 |
低温域 (160度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
コンタミ 発⽣ リスク 乾燥機の内部での摩擦により、コンタミが発生するリスクがあるか。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
高い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こるため、コンタミが発生するリスクが高い。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
高い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こるため、コンタミが発生するリスクが高い。 |
洗浄時間
乾燥を行うごとに洗浄が必要な工業用乾燥機。内部構造が複雑な場合、解体が必要となるため、洗浄時間が長くなる。 |
短い
内部構造がシンプルなため、洗浄時間が短い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
短い
内部構造がシンプルなため、洗浄時間が短い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
消耗 部品 攪拌に羽を使用している、摩擦を起こすための部品が多い乾燥機の場合、消耗品の交換が必要となる。 |
少ない
消耗品はほとんどない。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
少ない
消耗品はほとんどない。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
特⻑ | 上記項⽬に幅広く対応した上で、粒⼦がダマにならない | 最も⼀般的な形式のため使い慣れている研究者が多い | 高真空下で低温乾燥が可能なため、熱に弱い原料に向いている | 食品乾燥など攪拌が必要のないものに 向いている | 大量の原料の乾燥に適している |
代表的な 製品(※) |
中央化工機
VU型振動乾燥機 |
ヤスジマ
YVD真空撹拌乾燥機 |
徳寿工作所
真空回転乾燥機 WDV型 |
長門電機工作所
箱型棚式乾燥機 |
栗本鐵工所
流動層乾燥装置 |
※タイプ別の代表的な製品の選出基準
「振動乾燥機」「攪拌乾燥機」「真空回転乾燥機」「箱型棚式乾燥機」「流動層乾燥機」⇒2022年3月23日時点で各タイプ名をGoogle検索した際、最上位に表示されるメーカーの商品。