棒状の素材や製品と一口に言っても、実際には乾麺などの食品から割り箸のような木製のもの、あるいは金属棒やパイプ製品まで多種多様なものが存在しており、材質や素材、大きさなど特性ごとに適している工業用乾燥機も異なります。
棒状の素材を乾燥させたいと考えた場合、まずはどのような製品や材質のものを乾燥させるのか、きちんと棒状素材の特性や種類などを把握しておかなければなりません。そしてその上で、それぞれの特徴や注意点に合わせて工業用乾燥機を選択することが必要です。
ここでは主に食品分野、木材分野、工業用品、そして樹脂製品の4種類を対象として、乾燥の必要性や乾燥機の選び方をまとめます。
ラーメンに使用される乾麺やパスタ、素麺など麺類は食品分野の棒状素材の代表例です。また、乾麺は文字通り小麦粉などから製造した生麺を乾燥させることで商品として完成するため、乾燥機による乾燥作業は極めて重要な工程になることもポイントです。
乾麺は製品の種類によって細さや長さが厳格に定められており、さらに食品としての衛生環境にも配慮して作業されなければなりません。
乾燥が早すぎると表面のみが乾燥して内外の水分差が大きくなり、反り返ったり割れたりといった不良も生じやすくなります。そのため、乾麺の乾燥機は安全面や衛生面に配慮しつつ、商品の種類や性質に合わせて乾燥速度を調整できるものが適しています。
伐採した材木はそのままだと水分を含有しているため、建材や資材として利用するためには必ず乾燥工程を経なければなりません。しかし、棒状の木材と一口に言ってもその種類やサイズは様々であり、木の種類や大きさによっては乾燥のしやすさも異なります。
食品と同様に木材は乾燥速度も重要になり、急激な乾燥では木材が反り返ってしまって商品価値を失う恐れがあります。加えて用途によって水分含有量を調節しなければならず、目的によっては乾燥させすぎないよう調整できることも大切です。
また一度に乾燥させる量や対応可能なサイズにも注意しなければなりません。
金属加工の分野や工業製品の製造工程などでは、棒状金属や溶接棒といった金属製の棒状素材が用いられています。
例えば鉄のような金属は水分が付着していることでサビや腐食の発生リスクが高まる上、用途によっては水分が作業品質を悪化させてしまう恐れもあります。
また、めっき加工や塗装加工などを必要とする棒状素材の場合、それぞれの表面加工の一環として乾燥が行われることもあるでしょう。
工業用品の製造工程における乾燥は金属の素材や形状、また加工時の条件など目的に合わせて乾燥機を選定することが不可欠です。加えてFA化などを目指す場合は他の機器やシステムとの互換性も重要です。
水道管など樹脂製のパイプのように、円筒状になっている棒状製品にも様々な種類が存在します。
パイプ状の部品や素材を乾燥させる場合、外側の表面に印字したインクを乾燥させるだけでなく、洗浄後にパイプの内側について乾燥させなければならないこともあるでしょう。しかしパイプの長さや内径によっては水分が残りやすくなり、耐熱性の有無によって乾燥機の設定条件も変わってきます。
そのため乾燥機を選ぶ場合も、目的とする円筒状製品やパイプ素材の適性に合わせて対応可能なものを比較検討してください。
半導体や各種薬品、食品など、自社商品の研究開発を目的とした工業用乾燥機には、様々なタイプが存在します。
ここでは代表的な5タイプについて、簡易的な比較表にまとめています。自社にはどのタイプが最適なのか、検討をしてみてください。
振動乾燥機
振動乾燥機はドラム型は缶体内に原料を投入し振動を行い、原料の流動化・乾燥を行う乾燥装置です。 |
攪拌乾燥機
攪拌式の乾燥機は、本体内部にあるパドルや羽根により原料を攪拌し、乾燥を行うタイプの乾燥機です。 |
真空回転乾燥機 (コニカルドライヤー) 真空回転乾燥機は、本体部分を密閉して減圧を行い、真空状態を作り出して原料を乾燥する構造の乾燥装置です。 |
箱型棚式 乾燥機 箱型棚式乾燥機はトレイに乾燥物を配置し、乾燥を行う構造の乾燥装置です。 |
流動層乾燥機
流動層乾燥機にはさまざまな形状があり、回転運動や振動、熱風などを利用し乾燥を行います。 |
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材料適⽤ 範囲 様々な種類・状態の材料に対応をしてるか。凝集性・付着性のある材料、水分量の多い材料、を苦手とする乾燥機も。 |
広い 幅広く対応 本体部分は真空状態になるため、様々な材料に対応。また、外に空気が漏れないため、人体に有害なものやナノ粒子状なども対応可能です。 |
広い 幅広く対応 本体部分は閉じられた状態になるため、様々な材料に対応。 |
広い 幅広く対応 本体部分は真空状態になるため、様々な材料に対応。 |
狭い 凝集性・付着性のある材料は苦手 攪拌が行われないため、凝集性・付着性のある材料に適用しない。 |
狭い 凝集性・付着性のある材料不可 攪拌が行われないため、凝集性・付着性のある材料に適用しない。また、水分を多量に含んだものも苦手とする。 |
適⽤量
一度に乾燥を行う材料の適用量はどうか。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩
材料を水平に並べる構造上、大量の材料を乾燥させる際には広いスペースが必要となる。 |
大
大量の材料の乾燥に適用したタイプの乾燥機。 |
粒⼦破損
材料の粒子を破壊せずに乾燥ができるか。物理的な摩擦が少ないものが好ましい。 |
少ない
振動による攪拌のため、機器による摩擦を発生させない。 |
有り
攪拌の際に機器による摩擦が発生しやすい。 |
少ない
回転による攪拌のため、機器による摩擦を発生させない。 |
少ない
攪拌を行わないため、機器による摩擦を発生させない。 |
有り
攪拌の際に機器による摩擦が発生しやすい。 |
加熱温度
関節加熱の温度が高いほど乾燥速度は早まるが、内部構造が複雑な機器の場合、熱膨張の影響を受けやすいため、制限がかかる。 |
高温域 (250度以下) 内部構造がシンプルなため、高温での過熱が可能。 |
中温域 (190度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
中温域 (190度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
高温域 (250度以下) 内部構造がシンプルなため、高温での過熱が可能。 |
低温域 (160度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
コンタミ 発⽣ リスク 乾燥機の内部での摩擦により、コンタミが発生するリスクがあるか。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
高い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こるため、コンタミが発生するリスクが高い。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
高い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こるため、コンタミが発生するリスクが高い。 |
洗浄時間
乾燥を行うごとに洗浄が必要な工業用乾燥機。内部構造が複雑な場合、解体が必要となるため、洗浄時間が長くなる。 |
短い
内部構造がシンプルなため、洗浄時間が短い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
短い
内部構造がシンプルなため、洗浄時間が短い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
消耗 部品 攪拌に羽を使用している、摩擦を起こすための部品が多い乾燥機の場合、消耗品の交換が必要となる。 |
少ない
消耗品はほとんどない。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
少ない
消耗品はほとんどない。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
特⻑ | 上記項⽬に幅広く対応した上で、粒⼦がダマにならない | 最も⼀般的な形式のため使い慣れている研究者が多い | 高真空下で低温乾燥が可能なため、熱に弱い原料に向いている | 食品乾燥など攪拌が必要のないものに 向いている | 大量の原料の乾燥に適している |
代表的な 製品(※) |
中央化工機
VU型振動乾燥機 ![]() 引用元:中央化工機HP |
ヤスジマ
YVD真空撹拌乾燥機 ![]() ヤスジマHP |
徳寿工作所
真空回転乾燥機 WDV型 ![]() 徳寿工作所HP |
長門電機工作所
箱型棚式乾燥機 ![]() 引用元:長門電機工作所HP |
栗本鐵工所
流動層乾燥装置 ![]() 引用元:栗本鐵工所HP |
※タイプ別の代表的な製品の選出基準
「振動乾燥機」「攪拌乾燥機」「真空回転乾燥機」「箱型棚式乾燥機」「流動層乾燥機」⇒2022年3月23日時点で各タイプ名をGoogle検索した際、最上位に表示されるメーカーの商品。