乾燥機を使用する目的は、さまざまな物質の乾燥に加え混合・攪拌・加熱・解砕など多岐にわたります。
多種多様なメーカーが数々のラインナップを販売していますが、それぞれの目的に合わせた機能を搭載した乾燥機があります。
乾燥機によって得られる仕上がりや適した乾燥方法、使用できる原料などが異なるため、各原料の注意点などを考慮した上で適切な乾燥機を選択する必要があります。
ここでは原料ごとにおける乾燥や乾燥装置を選ぶ際のポイント、具体的な原料の種類などを紹介しています。
有機物は炭素を含む化合物の大部分をいい、医薬品や農薬、染料・顔料、各種有機工業薬品などがこれに該当します。
原料によって取り扱うべき温度帯や原料に与える影響が異なり、さらに個体、粉体など、原料の状態によっても乾燥機を選ぶ基準が変わってきます。
直接体内に取り込むものや、人工的な手を加えることによって人体に有害な影響を与えるような原料もあるため、取り扱いの際には注意が必要です。
無機物は有機化合物以外の化合物をいいます。 定義が非常にざっくりしていますが、さまざまな物質の原料や鉱石などがこれに該当します。
身近なものでいうと金属やガラスなどがあり、中には熱を加えると形が変わってしまうものもあります。
低温でも変質してしまうものや、反対に高温でなければ望む通りの加工が施せないものもありますので、目的・用途に応じた乾燥などが行える乾燥機を選定しましょう。
金属粉は粉末状に加工を施された金属のことをいいます。 通常の金属片と比べると表面積割合が大きいため、熱伝導率が高くなり、自然発火しやすい素材です。
自動車や医療・エレクトロニクスなど、金型に圧縮して精度の高い部品作りが行われる、我々の生活に欠かせない分野に利用されています。
金属粉は粉塵爆発などの危険性も伴う原料になるため、取り扱う際には作業場の安全に十分に注意しましょう。
樹脂はさまざまな生活必需品の素材として利用されています。
樹脂は主に2種類あり、植物から分泌される物質を用いる天然樹脂と、有機化学を用いて合成される人工樹脂があります。
用途によっても取り扱い方法は変わりますが、天然樹脂は主に塗料や接着剤、人工樹脂は主にプラスチック製品や発泡スチロール、建材に利用されています。
中には、引火性や有毒性のある溶剤が含まれているものもあるため、作業場の安全に注意する必要があります。
セラミックスは、人工的に作られた非金属の無機物個体をいい、硬度が高い・耐腐食性に優れている・電気を通しづらいといった特性を持っています。
さまざまな分野に活用される原料で、半導体や液晶製造装置、携帯電話や義歯など色々なモノに使われています。
ただしセメントなど、人体に対して刺激性や溶融性がある原料もありますので、取り扱う際には注意が必要です。
廃棄物は一般廃棄物と産業廃棄物に分けられ、燃え殻や汚泥、廃液などさまざまな種類に分類されます。
産業廃棄物の処理責任は排出事業者にあり、適切な処理が必要。とくに汚泥や廃液などは水分を多く含んでいるため、乾燥させて減容することで処理にかかるコストを大きく削減することができるでしょう。
また、乾燥によって再資源化が可能な廃棄物もありますので、処理には乾燥機を活用するのがおすすめです。
染料は繊維などを任意の色へ染めるための物質であり、天然原料から抽出された天然染料や化学合成された合成染料など様々な種類があります。染料は種類によって用途や性質が異なっており、乾燥処理においても各特性を把握した上で乾燥機や工程を考えなければならないため、まずは代表的な染料の種類や特徴を覚えておきましょう。
半導体や各種薬品、食品など、自社商品の研究開発を目的とした工業用乾燥機には、様々なタイプが存在します。
ここでは代表的な5タイプについて、簡易的な比較表にまとめています。自社にはどのタイプが最適なのか、検討をしてみてください。
振動乾燥機
振動乾燥機はドラム型は缶体内に原料を投入し振動を行い、原料の流動化・乾燥を行う乾燥装置です。 |
攪拌乾燥機
攪拌式の乾燥機は、本体内部にあるパドルや羽根により原料を攪拌し、乾燥を行うタイプの乾燥機です。 |
真空回転乾燥機 (コニカルドライヤー) 真空回転乾燥機は、本体部分を密閉して減圧を行い、真空状態を作り出して原料を乾燥する構造の乾燥装置です。 |
箱型棚式 乾燥機 箱型棚式乾燥機はトレイに乾燥物を配置し、乾燥を行う構造の乾燥装置です。 |
流動層乾燥機
流動層乾燥機にはさまざまな形状があり、回転運動や振動、熱風などを利用し乾燥を行います。 |
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材料適⽤ 範囲 様々な種類・状態の材料に対応をしてるか。凝集性・付着性のある材料、水分量の多い材料、を苦手とする乾燥機も。 |
広い 幅広く対応 本体部分は真空状態になるため、様々な材料に対応。また、外に空気が漏れないため、人体に有害なものやナノ粒子状なども対応可能です。 |
広い 幅広く対応 本体部分は閉じられた状態になるため、様々な材料に対応。 |
広い 幅広く対応 本体部分は真空状態になるため、様々な材料に対応。 |
狭い 凝集性・付着性のある材料は苦手 攪拌が行われないため、凝集性・付着性のある材料に適用しない。 |
狭い 凝集性・付着性のある材料不可 攪拌が行われないため、凝集性・付着性のある材料に適用しない。また、水分を多量に含んだものも苦手とする。 |
適⽤量
一度に乾燥を行う材料の適用量はどうか。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩
材料を水平に並べる構造上、大量の材料を乾燥させる際には広いスペースが必要となる。 |
大
大量の材料の乾燥に適用したタイプの乾燥機。 |
粒⼦破損
材料の粒子を破壊せずに乾燥ができるか。物理的な摩擦が少ないものが好ましい。 |
少ない
振動による攪拌のため、機器による摩擦を発生させない。 |
有り
攪拌の際に機器による摩擦が発生しやすい。 |
少ない
回転による攪拌のため、機器による摩擦を発生させない。 |
少ない
攪拌を行わないため、機器による摩擦を発生させない。 |
有り
攪拌の際に機器による摩擦が発生しやすい。 |
加熱温度
関節加熱の温度が高いほど乾燥速度は早まるが、内部構造が複雑な機器の場合、熱膨張の影響を受けやすいため、制限がかかる。 |
高温域 (250度以下) 内部構造がシンプルなため、高温での過熱が可能。 |
中温域 (190度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
中温域 (190度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
高温域 (250度以下) 内部構造がシンプルなため、高温での過熱が可能。 |
低温域 (160度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
コンタミ 発⽣ リスク 乾燥機の内部での摩擦により、コンタミが発生するリスクがあるか。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
高い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こるため、コンタミが発生するリスクが高い。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
高い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こるため、コンタミが発生するリスクが高い。 |
洗浄時間
乾燥を行うごとに洗浄が必要な工業用乾燥機。内部構造が複雑な場合、解体が必要となるため、洗浄時間が長くなる。 |
短い
内部構造がシンプルなため、洗浄時間が短い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
短い
内部構造がシンプルなため、洗浄時間が短い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
消耗 部品 攪拌に羽を使用している、摩擦を起こすための部品が多い乾燥機の場合、消耗品の交換が必要となる。 |
少ない
消耗品はほとんどない。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
少ない
消耗品はほとんどない。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
特⻑ | 上記項⽬に幅広く対応した上で、粒⼦がダマにならない | 最も⼀般的な形式のため使い慣れている研究者が多い | 高真空下で低温乾燥が可能なため、熱に弱い原料に向いている | 食品乾燥など攪拌が必要のないものに 向いている | 大量の原料の乾燥に適している |
代表的な 製品(※) |
中央化工機
VU型振動乾燥機 |
ヤスジマ
YVD真空撹拌乾燥機 |
徳寿工作所
真空回転乾燥機 WDV型 |
長門電機工作所
箱型棚式乾燥機 |
栗本鐵工所
流動層乾燥装置 |
※タイプ別の代表的な製品の選出基準
「振動乾燥機」「攪拌乾燥機」「真空回転乾燥機」「箱型棚式乾燥機」「流動層乾燥機」⇒2022年3月23日時点で各タイプ名をGoogle検索した際、最上位に表示されるメーカーの商品。