「腐食しない乾燥機がほしい」「乾燥にどれくらいの時間がかかる?」など、乾燥機に関する疑問をQ&A形式で紹介します。
酸性系の原料を乾燥するとき、乾燥機の内部が腐食してしまうことがあります。酸性系の原料の乾燥には、耐食性の高いSUS316Lやハステロイ製の乾燥機がおすすめです。
ステンレスというとSUS304が一般的ですが、SUS316Lはさらに耐食性をアップさせています。SUS304には含まれていない成分「モリブデン」により、不動態被膜が厚くなっているのが特徴です。
また、ハステロイはニッケルを主成分とした合金。耐食性や耐熱性に優れており、航空宇宙分野や造船部品などに使われています。
1つ1つの粒が非常に細かいナノ粒子を乾燥できる乾燥機は限られています。また、ナノ粒子では異なる特性をもつこともあり、素材や用途に合った乾燥機を選び必要があります。
たとえば振動乾燥機構造を利用した振動流動分散では、缶体内にエアーを吹き込むことでナノ粒子を乾燥できます。
風量が必要以上にある場合はムダな熱として排出されてしまい、乾燥スピードが上がることはありません。たとえば乾燥時間が長い・ムラのある乾燥になってしまうという場合は、風量の問題ではなく乾燥物を多く詰め込みすぎて風の流れが悪くなっている可能性があります。
風の役割は、熱を送ることや乾燥物周辺の水蒸気を乾燥機の外へ出すこと。そのため風量が多ければ早く乾燥できるわけではないのです。乾燥スピードを上げたい場合は、処理量にあった機械の選定が大切です。
乾燥できるまでの時間は乾燥したい対象物によって異なるため、一概に何時間で乾燥できるとはいえません。たとえば常温保存の果物や農産物、水産物などの乾燥では水分量を13%以下(あるいは10%以下)にする必要があります。もともと水分量が少ない・体積に比べて表面積の大きい対象物なら乾燥までの時間は短いでしょう。そのため早く乾燥させたい場合は対象物を小さく分割したり、切って厚さを薄くするなどの工夫が必要です。
自社の対象物がどのくらいで乾燥できるかは、メーカーの試験乾燥などで確かめるのがおすすめです。
乾燥させる素材によっても異なりますが、基本的には天日干しや自然乾燥よりもスピーディで安定した仕上がりになることが多いでしょう。ただ乾燥機の性能を最大限引き出すためには、素材に合った適切な操作を行うことが大切です。そのため素材に合わせて乾燥機を操作するためにも、しっかりと適切な操作方法を事前に確認してください。乾燥機ごとで適切な使用法などは異なるため、説明書や冊子で乾燥方法をチェックしておきましょう。
乾燥テスト・試験乾燥に対応しているメーカーであれば可能です。乾燥テストを行うことで仕上がり具合・実際の乾燥時間・乾燥方法・操作性などを細かな部分まで確認できるでしょう。ただメーカーによって費用がかかるケースもあるため、乾燥テストを希望している場合は対応可能かどうか、費用がかかるかどうかなどをメーカーに直接確認してください。
乾燥機によっては使用後そのまま放置すると結露によって水分が内部に溜まってしまい、徐々に水滴が下部に垂れて乾燥機の下部にサビが発生するケースもあります。乾燥が終わったら、そのまま放置するのではなく乾燥機内の湿気を除去するために送風運転を行うのが良いでしょう。また保管時には硫黄・塩素・酸・アンモニアなどの化学肥料をはじめ、消毒薬剤を乾燥機のそばに置かないよう注意することが大切です。
乾燥室の内部に棚があり、その棚の上に乾燥用トレイを設置し乾燥するタイプです。基本的にトレイは風通しが良くなるよう、網目状のものが多いでしょう。乾燥したい対象物をトレイに並べる手間もかかりますが、様々な対象物に活用できるといった魅力もあります。またトレイの下から熱風を当てる「吹上式」、横から熱風を通す「横吹式」の二つがあり、どの方式が適しているかは対象物によって異なります。
半導体や各種薬品、食品など、自社商品の研究開発を目的とした工業用乾燥機には、様々なタイプが存在します。
ここでは代表的な5タイプについて、簡易的な比較表にまとめています。自社にはどのタイプが最適なのか、検討をしてみてください。
振動乾燥機
振動乾燥機はドラム型は缶体内に原料を投入し振動を行い、原料の流動化・乾燥を行う乾燥装置です。 |
攪拌乾燥機
攪拌式の乾燥機は、本体内部にあるパドルや羽根により原料を攪拌し、乾燥を行うタイプの乾燥機です。 |
真空回転乾燥機 (コニカルドライヤー) 真空回転乾燥機は、本体部分を密閉して減圧を行い、真空状態を作り出して原料を乾燥する構造の乾燥装置です。 |
箱型棚式 乾燥機 箱型棚式乾燥機はトレイに乾燥物を配置し、乾燥を行う構造の乾燥装置です。 |
流動層乾燥機
流動層乾燥機にはさまざまな形状があり、回転運動や振動、熱風などを利用し乾燥を行います。 |
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材料適⽤ 範囲 様々な種類・状態の材料に対応をしてるか。凝集性・付着性のある材料、水分量の多い材料、を苦手とする乾燥機も。 |
広い 幅広く対応 本体部分は真空状態になるため、様々な材料に対応。また、外に空気が漏れないため、人体に有害なものやナノ粒子状なども対応可能です。 |
広い 幅広く対応 本体部分は閉じられた状態になるため、様々な材料に対応。 |
広い 幅広く対応 本体部分は真空状態になるため、様々な材料に対応。 |
狭い 凝集性・付着性のある材料は苦手 攪拌が行われないため、凝集性・付着性のある材料に適用しない。 |
狭い 凝集性・付着性のある材料不可 攪拌が行われないため、凝集性・付着性のある材料に適用しない。また、水分を多量に含んだものも苦手とする。 |
適⽤量
一度に乾燥を行う材料の適用量はどうか。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩
材料を水平に並べる構造上、大量の材料を乾燥させる際には広いスペースが必要となる。 |
大
大量の材料の乾燥に適用したタイプの乾燥機。 |
粒⼦破損
材料の粒子を破壊せずに乾燥ができるか。物理的な摩擦が少ないものが好ましい。 |
少ない
振動による攪拌のため、機器による摩擦を発生させない。 |
有り
攪拌の際に機器による摩擦が発生しやすい。 |
少ない
回転による攪拌のため、機器による摩擦を発生させない。 |
少ない
攪拌を行わないため、機器による摩擦を発生させない。 |
有り
攪拌の際に機器による摩擦が発生しやすい。 |
加熱温度
関節加熱の温度が高いほど乾燥速度は早まるが、内部構造が複雑な機器の場合、熱膨張の影響を受けやすいため、制限がかかる。 |
高温域 (250度以下) 内部構造がシンプルなため、高温での過熱が可能。 |
中温域 (190度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
中温域 (190度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
高温域 (250度以下) 内部構造がシンプルなため、高温での過熱が可能。 |
低温域 (160度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
コンタミ 発⽣ リスク 乾燥機の内部での摩擦により、コンタミが発生するリスクがあるか。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
高い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こるため、コンタミが発生するリスクが高い。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
高い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こるため、コンタミが発生するリスクが高い。 |
洗浄時間
乾燥を行うごとに洗浄が必要な工業用乾燥機。内部構造が複雑な場合、解体が必要となるため、洗浄時間が長くなる。 |
短い
内部構造がシンプルなため、洗浄時間が短い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
短い
内部構造がシンプルなため、洗浄時間が短い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
消耗 部品 攪拌に羽を使用している、摩擦を起こすための部品が多い乾燥機の場合、消耗品の交換が必要となる。 |
少ない
消耗品はほとんどない。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
少ない
消耗品はほとんどない。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
特⻑ | 上記項⽬に幅広く対応した上で、粒⼦がダマにならない | 最も⼀般的な形式のため使い慣れている研究者が多い | 高真空下で低温乾燥が可能なため、熱に弱い原料に向いている | 食品乾燥など攪拌が必要のないものに 向いている | 大量の原料の乾燥に適している |
代表的な 製品(※) |
中央化工機
VU型振動乾燥機 |
ヤスジマ
YVD真空撹拌乾燥機 |
徳寿工作所
真空回転乾燥機 WDV型 |
長門電機工作所
箱型棚式乾燥機 |
栗本鐵工所
流動層乾燥装置 |
※タイプ別の代表的な製品の選出基準
「振動乾燥機」「攪拌乾燥機」「真空回転乾燥機」「箱型棚式乾燥機」「流動層乾燥機」⇒2022年3月23日時点で各タイプ名をGoogle検索した際、最上位に表示されるメーカーの商品。