振動乾燥機にはドラム型やコンベヤ型など、さまざまな形のものがあります。
ドラム型は缶体内に原料を投入し振動を行い、原料の流動化・乾燥を行う乾燥装置です。
コンベヤ型は振動コンベヤをベースに、熱源あるいは冷却源とそれらの熱風や冷風をコンベヤ内に送り込むための送風装置、及び排気装置などにより構成されています。
主に粉体の乾燥に使用され、振動だけで粉粒体を流動化させながら乾燥・冷却を行う仕組みが特徴の乾燥装置です。
ドラム型の振動乾燥機は、缶体を密閉して乾燥を行います。そのため有機溶剤を含んだ原料の乾燥であっても、人体への影響やリスクを低減させることができます。
また缶体自体も洗浄しやすく混入の心配も薄い形が一般的のため、さまざまな原料のスイッチもしやすくなっています。さらに構造として、スラリー状の原料を脱液しないまま投入することも可能なため、幅広い工程に対応させ利用することも可能です。
コンベヤ型の振動乾燥機は、振動が材料の流動機能と輸送機能を合わせ持つため、非常に効率的な構造になっています。その構造により送風動力を抑えることができるため、他の乾燥方式を用いる乾燥装置に比べると、省エネルギーかつ高能率に処理を行うことが可能です。
また伝熱効率も高いため、単位面積あたりの処理能力が高く、生産性の改善にも資する乾燥装置です。さらに振幅や振動数などの振動条件を調整することができれば、材料が熱風や冷風に晒されている時間や滞留時間をコントロールすることも可能です。
振動乾燥機は熱風や冷風が適度な緩衝作用の働きをするため、材料に対してきわめてソフトなアプローチにより乾燥を進めることが可能です。
また、振動条件や材料の層厚・滞留時間を自由にコントロールする機能がある場合には、適用材料の温度や水分を調整できるため、周囲温度や湿度、含水率などの状況に合わせた絶妙な品質管理を行うこともできます。材料に対してソフトで破損を少なく仕上げることができる点や、絶妙な品質管理を行えるというメリットを活かし、食品関連や化学・医薬品関連など幅広い分野の原料乾燥に用いることが可能です。
振動式の乾燥装置では、攪拌式や回転式のものと比較すると、装置内に攪拌羽根や回転する装備がありません。そのため内部構造に凹凸が少なく、異物混入のリスクを低減させることができます。
攪拌式・回転式の乾燥装置だと回転部が乾燥機内部にあるため、軸シール部の洗浄に手間がかかります。さらに、攪拌羽根の回転体があると羽根部分に粉が付着するなど、軸シール部(グランドパッキン)がコンタミの要因となる可能性が高くなります。振動式乾燥機は内部構造がシンプルなため、洗浄しやすく衛生管理も行いやすいという特徴も合わせ持っています。
振動乾燥機にはさまざまな形態・機種があり、取り扱う原料の種類や状態によって向き・不向きや適しているかどうかが大きく変わってくる場合があります。ここでは、各メーカーにおける振動乾燥機の構造や特徴、そのメーカーがどのような企業かという部分に焦点をあてて、紹介しています。
こんな企業におすすめ
1961年に振動ミルを開発して以来、振動エネルギーを活用した乾燥機のパイオニア企業(※)として業界を牽引する中央加工機の振動乾燥機です。設計段階から完全オーダーメイドで顧客の細かなニーズにも対応しているため、高い精度が求められる装置の設計や製造も可能です。
本体側面に取り付けられた2台の振動モーターが斜め上方の半楕円状の振動を発生させる振動機構になっており、乾燥機の本体底部から加えられた振動が本体内部にある粉粒体を円周方向に旋回させながら乾燥と混合を同時に行います。
粉体はもちろん、スラリー状やペースト状の原料であっても乾燥と解砕を同時に行うことができ、さまざまな状態の原料の乾燥が可能になっています。
本体内部に攪拌部品がないシンプルな構造で、機器同士の摩擦が発生しなため、コンタミ発生のリスクが非常に低いのが特徴。シンプルな構造のため洗浄も容易、かつ高価な部品交換の心配もないメンテナンスフリーの乾燥装置です。
※参考元:中央化工機HPhttps://www.v-dryer.jp/
こんな企業におすすめ
2021年時点で創業から100年を超える歴史を誇る老舗企業、シンフォニアテクノロジーの振動乾燥機です。さまざまな事業を幅広く手掛けており、顧客・社会のニーズに応えて磨き上げた技術で製品開発に努めています。豊富な製品に対応しており、食品分野をはじめ化学や薬品、窯業、金属分野など、多種多様な粉粒体処理の実績があります。
コンベア型の振動乾燥機は流動化の効果でムラの無い仕上がりとなり、振動のコントロールを行えば原料や目的、用途に合わせた望む仕上がりも実現が可能です。原料にソフトで優しいため柔らかいフレークやペレットなどの取り扱いにも向いています。
HACCPによる衛生管理も万全なため、食品など衛生面での注意が必要な原料を取り扱う企業に推奨される乾燥機です。
こんな企業におすすめ
日本乾燥機株式会社は1910年に創業された産業用乾燥機の専業メーカーです。振動と熱風を併用する振動流動乾燥機や、真空ケーシングのなかでジャケット構造による熱伝導乾燥を行う真空振動乾燥機など、複数の乾燥機を展開していることも特徴です。
日本乾燥機株式会社の乾燥機はそれぞれ乾燥物の物性や用途に応じて開発されており、乾燥させたい対象品のサイズや種類が多い企業、乾燥中のコンタミを予防したい企業など、さまざまなニーズにマッチした製品を選べます。
製品の乾燥に関して気軽に相談も受け付けているため、乾燥機選びに悩んでいる人はアドバイスを求めてみても良いでしょう。
こんな企業におすすめ
杉山重工では振動コンベヤと上部にある発熱体を活用した遠赤外線振動乾燥機を製造・販売しています。発熱体であるヒータは遠赤外線セラミックヒータのほかカンタルヒータにも対応可能。ヒータ数もオプションで仕様変更できるため、材料や希望に合った乾燥機を導入できます。
こんな企業におすすめ
宇通乾燥設備は、中国に拠点を持つメーカーです。宇通乾燥設備が開発したZDG振動流動層乾燥機は外から遮断された密閉構造になっており、原料の汚染リスクを抑えることができます。原料の表面へのダメージが少ないので、壊れやすい原料の乾燥にも最適。優れた調整機能と適用能力により、原料の厚さや動作速度、総合振幅を調整せずに制御できます。
半導体や各種薬品、食品など、自社商品の研究開発を目的とした工業用乾燥機には、様々なタイプが存在します。
ここでは代表的な5タイプについて、簡易的な比較表にまとめています。自社にはどのタイプが最適なのか、検討をしてみてください。
振動乾燥機
振動乾燥機はドラム型は缶体内に原料を投入し振動を行い、原料の流動化・乾燥を行う乾燥装置です。 |
攪拌乾燥機
攪拌式の乾燥機は、本体内部にあるパドルや羽根により原料を攪拌し、乾燥を行うタイプの乾燥機です。 |
真空回転乾燥機 (コニカルドライヤー) 真空回転乾燥機は、本体部分を密閉して減圧を行い、真空状態を作り出して原料を乾燥する構造の乾燥装置です。 |
箱型棚式 乾燥機 箱型棚式乾燥機はトレイに乾燥物を配置し、乾燥を行う構造の乾燥装置です。 |
流動層乾燥機
流動層乾燥機にはさまざまな形状があり、回転運動や振動、熱風などを利用し乾燥を行います。 |
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材料適⽤ 範囲 様々な種類・状態の材料に対応をしてるか。凝集性・付着性のある材料、水分量の多い材料、を苦手とする乾燥機も。 |
広い 幅広く対応 本体部分は真空状態になるため、様々な材料に対応。また、外に空気が漏れないため、人体に有害なものやナノ粒子状なども対応可能です。 |
広い 幅広く対応 本体部分は閉じられた状態になるため、様々な材料に対応。 |
広い 幅広く対応 本体部分は真空状態になるため、様々な材料に対応。 |
狭い 凝集性・付着性のある材料は苦手 攪拌が行われないため、凝集性・付着性のある材料に適用しない。 |
狭い 凝集性・付着性のある材料不可 攪拌が行われないため、凝集性・付着性のある材料に適用しない。また、水分を多量に含んだものも苦手とする。 |
適⽤量
一度に乾燥を行う材料の適用量はどうか。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩
材料を水平に並べる構造上、大量の材料を乾燥させる際には広いスペースが必要となる。 |
大
大量の材料の乾燥に適用したタイプの乾燥機。 |
粒⼦破損
材料の粒子を破壊せずに乾燥ができるか。物理的な摩擦が少ないものが好ましい。 |
少ない
振動による攪拌のため、機器による摩擦を発生させない。 |
有り
攪拌の際に機器による摩擦が発生しやすい。 |
少ない
回転による攪拌のため、機器による摩擦を発生させない。 |
少ない
攪拌を行わないため、機器による摩擦を発生させない。 |
有り
攪拌の際に機器による摩擦が発生しやすい。 |
加熱温度
関節加熱の温度が高いほど乾燥速度は早まるが、内部構造が複雑な機器の場合、熱膨張の影響を受けやすいため、制限がかかる。 |
高温域 (250度以下) 内部構造がシンプルなため、高温での過熱が可能。 |
中温域 (190度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
中温域 (190度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
高温域 (250度以下) 内部構造がシンプルなため、高温での過熱が可能。 |
低温域 (160度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
コンタミ 発⽣ リスク 乾燥機の内部での摩擦により、コンタミが発生するリスクがあるか。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
高い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こるため、コンタミが発生するリスクが高い。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
高い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こるため、コンタミが発生するリスクが高い。 |
洗浄時間
乾燥を行うごとに洗浄が必要な工業用乾燥機。内部構造が複雑な場合、解体が必要となるため、洗浄時間が長くなる。 |
短い
内部構造がシンプルなため、洗浄時間が短い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
短い
内部構造がシンプルなため、洗浄時間が短い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
消耗 部品 攪拌に羽を使用している、摩擦を起こすための部品が多い乾燥機の場合、消耗品の交換が必要となる。 |
少ない
消耗品はほとんどない。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
少ない
消耗品はほとんどない。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
特⻑ | 上記項⽬に幅広く対応した上で、粒⼦がダマにならない | 最も⼀般的な形式のため使い慣れている研究者が多い | 高真空下で低温乾燥が可能なため、熱に弱い原料に向いている | 食品乾燥など攪拌が必要のないものに 向いている | 大量の原料の乾燥に適している |
代表的な 製品(※) |
中央化工機
VU型振動乾燥機 |
ヤスジマ
YVD真空撹拌乾燥機 |
徳寿工作所
真空回転乾燥機 WDV型 |
長門電機工作所
箱型棚式乾燥機 |
栗本鐵工所
流動層乾燥装置 |
※タイプ別の代表的な製品の選出基準
「振動乾燥機」「攪拌乾燥機」「真空回転乾燥機」「箱型棚式乾燥機」「流動層乾燥機」⇒2022年3月23日時点で各タイプ名をGoogle検索した際、最上位に表示されるメーカーの商品。