ガラスの製造や加工工程では、洗浄後の水分除去やコーティング処理後の乾燥など、さまざまな場面で乾燥機が使用されています。この記事ではガラスの乾燥が難しい理由や種類ごとの乾燥ポイント、乾燥工程で用いられる方法について紹介します。
ガラスは耐熱性や化学的安定性に優れる素材として知られていますが、乾燥工程では温度変化や異物、水分残留などによって品質に影響が生じることがあります。特に、光学用途や電子材料用途では、わずかな乾燥ムラや水滴跡であっても製品性能に影響するケースがあるため、対象物の特性に合わせた乾燥条件の制御が重要です。
ガラスは熱に強い素材として知られていますが、急激な温度変化には弱い性質があります。急加熱や急冷によってガラス内部に温度差が生じると、熱応力によってクラックや歪みが発生することがあります。
特に薄板ガラスや光学ガラスでは、わずかな変形でも品質に影響を与える場合があるため、乾燥時の温度管理が重要です。乾燥機を選定する際には、急激な加熱を避けながら均一に乾燥できるかどうかも確認しておきたいポイントです。
ガラスは表面の平滑性が高いため、乾燥後に水滴跡(ウォーターマーク)が残りやすい素材でもあります。洗浄後に水分が均一に除去されない場合、水滴中に含まれる微量成分が表面に残留し、シミやムラの原因となることがあります。
光学ガラスや電子材料向けガラス基板では、わずかなウォーターマークでも製品品質に影響を及ぼす可能性があるため、均一な乾燥や純水管理、クリーン環境での乾燥処理が重要です。
ガラスは表面状態が品質に直結しやすいため、乾燥中の異物付着にも注意が必要です。乾燥時の気流に含まれるちりやホコリ、設備内部の微粒子などが付着すると、透明性や密着性に影響を与える場合があります。
特に、ガラス基板や光学ガラスなどの精密用途では高い清浄度が求められるため、クリーン環境に対応した乾燥設備やフィルター管理が重要です。また、乾燥方法によっては静電気が発生し、異物を引き寄せやすくなるケースもあります。
ガラスは乾燥状態にムラがあると、外観や性能に影響が出てしまいます。たとえば、一部だけ温度が高くなることで歪みが発生したり、コーティング後の乾燥で膜厚にばらつきが生じたりすることがあります。
また、電子材料向けガラスや光学用途では、わずかな表面状態の違いが機能性に影響するケースも少なくありません。そのため、ガラスの乾燥では熱や気流を均一に制御し、対象物全体を安定して乾燥させることが求められます。
ガラスは種類や用途によって、求められる乾燥条件が大きく異なります。たとえば、板ガラスと光学ガラスでは重視される品質基準が異なり、ガラス粉末では粉体特有の乾燥課題も発生します。電子材料向けのガラス基板やコーティングガラスでは、異物付着や乾燥ムラが性能に直結するケースもあるため、用途に応じた乾燥方式や条件設定が重要です。
ここでは、代表的なガラスの種類ごとに乾燥時に注意したいポイントを紹介します。
板ガラスは建材や自動車、ディスプレイ用途など幅広い分野で使用されています。洗浄工程後に乾燥処理を行うことが多く、水滴跡や乾燥ムラを防ぐことが重要です。
特に大型サイズの板ガラスでは、部分的な温度差によって歪みや割れが発生しやすいため、均一に乾燥できるよう温度や風量を制御する必要があります。また、表面に異物が付着すると外観品質に影響するため、クリーン性にも配慮が求められます。
ガラス基板は、半導体やディスプレイ、電子部品などの分野で使用されています。表面精度が求められるため、乾燥工程ではわずかな水分残留や異物付着にも注意が必要です。
特に薄型のガラス基板は熱による影響を受けやすく、急激な加熱や乾燥ムラによって反りや変形が発生することがあります。そのため、クリーン乾燥やエアブロー乾燥などを用いながら、均一かつ精密な乾燥処理が行われます。
光学ガラスは、レンズやセンサー、光学機器などに使用されるガラスです。透明性や表面平滑性が重要であり、わずかな水滴跡や汚れでも製品性能に影響することがあります。
そのため、乾燥工程ではウォーターマークの防止や異物管理が重要視されます。また、コーティング処理を行う場合には、乾燥条件によって膜品質が変化することもあるため、温度や乾燥時間を細かく制御する必要があります。
ガラス粉末は、電子材料やセラミックス材料などの用途で使用されます。粉体であるため、乾燥中に粒子同士の凝集や乾燥ムラが発生しやすいのが特徴です。
また、粉末内部に水分が残留すると、後工程での混合や焼成工程に影響する場合があります。そのため、熱風乾燥や真空乾燥などを用いながら、均一に水分を除去できるよう乾燥条件を調整することが重要です。
コーティングガラスは、表面に機能性膜や保護膜などを形成したガラスです。コーティング後には、塗膜や成膜材料に含まれる溶剤や水分を除去するため、乾燥工程が必要になります。
乾燥条件が適切でない場合、塗膜のムラやひび割れ、密着不良などが発生することがあります。また、乾燥速度が速すぎると膜品質に影響を及ぼす可能性もあるため、温度や乾燥時間を適切に制御しながら乾燥を行うことが重要です。
ガラスの乾燥工程では、対象物の形状や用途、求められる品質に応じてさまざまな乾燥方式が使い分けられています。ここでは、ガラスの乾燥で用いられる代表的な乾燥方式について紹介します。
熱風乾燥は、加熱した空気を対象物に当て、水分を蒸発させる乾燥方法です。構造が比較的シンプルで導入しやすく、板ガラスやガラス原料など幅広い用途で使用されています。
大量処理に対応しやすいほか、乾燥温度を調整しやすい点も特徴です。一方で、急激な加熱によってガラス内部に温度差が生じると、歪みやクラックの原因になる場合があります。
赤外線乾燥は、赤外線を照射して対象物を加熱し、水分を蒸発させる乾燥方法です。立ち上がりが早く、短時間で乾燥しやすい特徴があります。
特に、コーティングガラスや薄膜処理後の乾燥工程などで使用されることがあり、効率よく表面乾燥を行える点がメリットです。また、熱風乾燥と組み合わせて用いられるケースもあります。一方で、加熱ムラが発生すると品質に影響する場合があるため、照射条件や距離の調整が重要です。
真空乾燥は、装置内部を減圧し、水分や溶剤の沸点を下げることで乾燥を行う方法です。低温でも乾燥しやすいため、熱影響を抑えたい場合に適しています。
ガラス粉末やコーティング後のガラスなど、温度変化による品質低下を避けたい工程で使用されることがあります。また、溶剤除去を効率よく行いやすい点も特徴です。ただし、設備コストが高くなる傾向があるため、用途や処理量に応じた導入検討が必要です。
低温乾燥は、比較的低い温度帯で時間をかけながら水分を除去する乾燥方法です。急激な加熱による熱応力を抑えやすいため、光学ガラスやコーティングガラスなど、熱の影響を受けやすい製品で用いられます。
また、乾燥中の歪みや変形を抑えながら処理しやすい点も特徴です。一方で、乾燥完了までに時間がかかるため、処理量や生産性とのバランスを考慮する必要があります。
クリーン乾燥は、クリーンルームや清浄化された環境下で乾燥を行う方法です。乾燥中の異物付着を防ぎやすいため、ガラス基板や光学ガラスなど、高い表面品質が求められる分野で採用されています。
乾燥時には、HEPAフィルターを通した清浄な空気を使用したり、温度や湿度を精密に管理したりすることで、品質の安定化を図ります。特に半導体や電子材料関連のガラスでは、微細な異物でも不良につながる可能性があるため、クリーン環境での乾燥が重要です。
振動乾燥は、装置に振動を与えながら原料を移動・分散させて乾燥する方法です。粉体同士の付着や凝集を抑えやすいため、ガラス粉末など微粒子材料の乾燥工程で用いられることがあります。
また、材料を均一に広げながら乾燥できるため、乾燥ムラを抑えやすい点も特徴です。一方で、粉塵対策や振動条件の調整が必要になるため、対象物の粒径や性状に応じた装置選定が重要です。
半導体や各種薬品、食品など、自社商品の研究開発を目的とした工業用乾燥機には、様々なタイプが存在します。
ここでは代表的な5タイプについて、簡易的な比較表にまとめています。自社にはどのタイプが最適なのか、検討をしてみてください。
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振動乾燥機
振動乾燥機はドラム型は缶体内に原料を投入し振動を行い、原料の流動化・乾燥を行う乾燥装置です。 |
攪拌乾燥機
攪拌式の乾燥機は、本体内部にあるパドルや羽根により原料を攪拌し、乾燥を行うタイプの乾燥機です。 |
真空回転乾燥機 (コニカルドライヤー) 真空回転乾燥機は、本体部分を密閉して減圧を行い、真空状態を作り出して原料を乾燥する構造の乾燥装置です。 |
箱型棚式 乾燥機 箱型棚式乾燥機はトレイに乾燥物を配置し、乾燥を行う構造の乾燥装置です。 |
流動層乾燥機
流動層乾燥機にはさまざまな形状があり、回転運動や振動、熱風などを利用し乾燥を行います。 |
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材料適⽤ 範囲 様々な種類・状態の材料に対応をしてるか。凝集性・付着性のある材料、水分量の多い材料、を苦手とする乾燥機も。 |
広い 幅広く対応 本体部分は真空状態になるため、様々な材料に対応。また、外に空気が漏れないため、人体に有害なものやナノ粒子状なども対応可能です。 |
広い 幅広く対応 本体部分は閉じられた状態になるため、様々な材料に対応。 |
広い 幅広く対応 本体部分は真空状態になるため、様々な材料に対応。 |
狭い 凝集性・付着性のある材料は苦手 攪拌が行われないため、凝集性・付着性のある材料に適用しない。 |
狭い 凝集性・付着性のある材料不可 攪拌が行われないため、凝集性・付着性のある材料に適用しない。また、水分を多量に含んだものも苦手とする。 |
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適⽤量
一度に乾燥を行う材料の適用量はどうか。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩
材料を水平に並べる構造上、大量の材料を乾燥させる際には広いスペースが必要となる。 |
大
大量の材料の乾燥に適用したタイプの乾燥機。 |
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粒⼦破損
材料の粒子を破壊せずに乾燥ができるか。物理的な摩擦が少ないものが好ましい。 |
少ない
振動による攪拌のため、機器による摩擦を発生させない。 |
有り
攪拌の際に機器による摩擦が発生しやすい。 |
少ない
回転による攪拌のため、機器による摩擦を発生させない。 |
少ない
攪拌を行わないため、機器による摩擦を発生させない。 |
有り
攪拌の際に機器による摩擦が発生しやすい。 |
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加熱温度
関節加熱の温度が高いほど乾燥速度は早まるが、内部構造が複雑な機器の場合、熱膨張の影響を受けやすいため、制限がかかる。 |
高温域 (250度以下) 内部構造がシンプルなため、高温での過熱が可能。 |
中温域 (190度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
中温域 (190度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
高温域 (250度以下) 内部構造がシンプルなため、高温での過熱が可能。 |
低温域 (160度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
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コンタミ 発⽣ リスク 乾燥機の内部での摩擦により、コンタミが発生するリスクがあるか。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
高い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こるため、コンタミが発生するリスクが高い。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
高い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こるため、コンタミが発生するリスクが高い。 |
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洗浄時間
乾燥を行うごとに洗浄が必要な工業用乾燥機。内部構造が複雑な場合、解体が必要となるため、洗浄時間が長くなる。 |
短い
内部構造がシンプルなため、洗浄時間が短い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
短い
内部構造がシンプルなため、洗浄時間が短い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
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消耗 部品 攪拌に羽を使用している、摩擦を起こすための部品が多い乾燥機の場合、消耗品の交換が必要となる。 |
少ない
消耗品はほとんどない。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
少ない
消耗品はほとんどない。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
| 特⻑ | 上記項⽬に幅広く対応した上で、粒⼦がダマにならない | 最も⼀般的な形式のため使い慣れている研究者が多い | 高真空下で低温乾燥が可能なため、熱に弱い原料に向いている | 食品乾燥など攪拌が必要のないものに 向いている | 大量の原料の乾燥に適している |
| 代表的な 製品(※) |
中央化工機
VU型振動乾燥機 ![]() 引用元:中央化工機HP |
ヤスジマ
YVD真空撹拌乾燥機 ![]() ヤスジマHP |
徳寿工作所
真空回転乾燥機 WDV型 ![]() 徳寿工作所HP |
長門電機工作所
箱型棚式乾燥機 ![]() 引用元:長門電機工作所HP |
栗本鐵工所
流動層乾燥装置 ![]() 引用元:栗本鐵工所HP |
※タイプ別の代表的な製品の選出基準
「振動乾燥機」「攪拌乾燥機」「真空回転乾燥機」「箱型棚式乾燥機」「流動層乾燥機」⇒2022年3月23日時点で各タイプ名をGoogle検索した際、最上位に表示されるメーカーの商品。