ろ過乾燥機は1台の機械でろ過・ケーキ洗浄・乾燥が可能な多機能な乾燥機です。医薬やファインケミカル、電子材料などの分野におけるコンタミ(異物混入)を避けたい処理物の乾燥に向いています。
処理方式では「連続式」と「バッチ式」に大別され、単価が低く処理量が多い場合は連続式、単価が高く処理量が少ない場合はバッチ式が選ばれることが多いようです。
さらに乾燥時の加熱方式では「直接加熱式」か「間接加熱式」に分けられ、医薬やファインケミカルのような異物混入が問題となるケースでは間接加熱式が適しています。
ろ過乾燥機の原理としては、まずろ過乾燥機の容器内部にろ過材を装着し、加圧あるいは真空によってろ過とケーキ洗浄を行います。その後熱媒を容器のジャケット部に流通させて対象物の乾燥を行う仕組みです。
なお、ろ過乾燥機の構造ではろ過・混合・洗浄・乾燥工程で「撹拌タイプ」と「振動タイプ」、「容器が回転するタイプ」など、他の乾燥機と同じ工程を取り入れている場合があります。円錐型のコニカルドライヤーにろ過機能を加えた装置も。振動タイプのろ過乾燥機では撹拌翼が不要なため、異物混入のリスクを抑えられるといったメリットがあります。
ろ過乾燥機は連続式とバッチ式に分けられ、処理の方法が異なります。
連続式では給液から脱液、排出までを並行して連続で処理。そのため大容量の処理が可能で、大量生産などの用途に適しています。ただし投入時の処理物の形状によっては、脱水率などの処理状況が異なる可能性があるため、注意が必要です。
バッチ式では起動から給液、脱液、排出、停止までの工程を1サイクルとして、繰り返し処理を行います。脱液や排出といった各工程にかける時間を任意に設定できるため、処理能力に優れているのが特徴。多様な対象物の乾燥が可能です。そのためバッチ式ろ過乾燥機は多品種小ロット生産の用途など、医薬やファインケミカル分野で広く活用されています。
ろ過乾燥機は医薬やファインケミカル、電子材料、感光性材料などのろ過・洗浄・乾燥を単一機で行える装置です。機器間を移動させる必要がないため、コンタミを防ぐことができます。
ろ過機から乾燥機へ対象物を移動させるハンドリングが必要ないことで、異物混入や製品ロスを防げるうえ手間も省けます。そのため省力化を実現でき、生産効率をアップさせることも可能。ウェットケーキなどのハンドリングが困難な対象物にもおすすめです。
さらに固形物を機器下部で排出するろ過乾燥機では、製品固形物を完全排出できます。そのため乾燥機内部に製品が残ってしまうことがなく、ムダのないろ過乾燥が可能です。
また、振動タイプのろ過乾燥機は撹拌翼がなくシンプルな構造になっているため、お手入れも簡単。メンテナンスの手間やコストを削減することができます。
ろ過乾燥機は一機でろ過から乾燥までを行えるのが特徴です。コンタミを防ぎたい処理物に適しており、医薬品やファインケミカルなどが挙げられます。各メーカーからろ過乾燥機が販売されていますが、ろ過・乾燥の方法が異なります。撹拌翼の有無にも違いがあるため、用途や希望に合った装置を選びましょう。
引⽤元︓中央化工機公式HP(https://www.chuokakohki.co.jp/dryer.html#dryer4)
中央化工機は1950年に設立した会社です。1966年には振動ミルの製作・販売を開始しており、現在では振動乾燥機や凍結振動乾燥機、振動ろ過乾燥機などを取り扱っています。
VUF振動ろ過乾燥機では振動乾燥機にろ過機能を加えており、スラリー状の原料のろ過~乾燥までを一機で行えます。また、密閉構造や摺動部がないことから、外部汚染やコンタミ混入の心配がないのもメリット。また、軸シールを使用していないためシール性も良好です。
なお、ろ過は吸引と加圧によって行われ、全容量は15L。ろ材はろ布(耐酸アラミドフェルト)などを使用しており、焼結板などへの対応も可能です。
引⽤元︓タナベウィルテック公式HP(http://www.tanabewilltec.co.jp/products/filter)
1896年創業のタナベウィルテックは遠心分離機や産業機器の設計・製造・販売を行っている会社です。1997年にはスイスのローゼンムンド社とろ過乾燥機の技術連携を行っており、2010年にはろ過乾燥機全量ケーキ排出システムの開発を成功させています。
ローゼンムンド社と技術開発を行った「ろ過乾燥機(TR-F型)」では、優れた撹拌力をもつ撹拌翼で対象物のろ過・洗浄・乾燥をひとつの缶内で完結させます。ケーキは機械側面の排出口から自動排出され、排出口には特殊シールシステムを採用しています。
また、製品に応じて処理工程を自由に設定できるうえ、最大容量に応じて複数の型式を用意しています。
引用元:松本機械(https://mark3.co.jp/products/fms)
松本機械は1939年に設立し、遠心分離機や付属する化学機械や装置の開発・製作を行っている会社です。遠心分離機をメインとして取り扱っており、フランスのEfCI社の加圧濾過乾燥機FMSも代理店として販売。医薬品や原薬、化成品などのろ過・乾燥の2工程を一機で行えます。
加圧濾過乾燥機(FMS)はろ材の変更を容易にでき、ろ布や焼結金属等に対応。また、撹拌翼のベローズが不要であり、コンタミの心配もないのが特徴です。さらにグローブボックスを取り付けることも可能なため、外部と接触させずに粉体回収を行えます。
なお、加圧濾過乾燥機(FMS)は完全受注生産となっており、顧客の要望に応じたサイズや仕様で製作可能です。
引用元:月島機械HP(https://www.tsk-g.co.jp/tech/industry/filter-dryer/)
月島機械は1905年に創業した歴史のある会社です。全国各地に事業所を設けており、水環境事業や産業事業などを行っています。
産業事業では幅広い機種のろ過装置を扱っており、容器回転型と撹拌反転型を用意。一機でろ過・ケーキ洗浄・乾燥工程を行えるため、工程間のハンドリングが不要です。また、固形物の排出口を装置下部に設置することで、容器内部の製品残留がないのも特徴。固形物の完全排出が可能です。
引用元:奈良機械製作所HP(http://www.nara-m.co.jp/product/dryer/fld.html)
長きに渡ってフィルタードライヤーなどの機械を製造・販売している会社です。オーダーメイドでの設計・製造を行っており、顧客のニーズに適した設計が行えるよう打ち合わせ・実験に注力。時代のニーズに応じた開発を進め、より要望に応えられるように日々研究を続けています。またアフターフォローも行い、納品後もサポートを実施しています。
引用元:イプロス(https://www.ipros.jp/product/detail/2000549765/)
新栄機械製作所のFR DRYERはオーダーメイドで顧客の要望に合わせた装置を製作する形式をとっています。そのため、難しい条件下でも対応できるように仕様を調整できるのが魅力。ほかにも取り扱っている乾燥機に振動層乾燥機や真空乾燥機、バンド乾燥機、スーパーウェットドライヤーなどがあり、ろ過乾燥機と併せての導入も可能です。
引用元:神鋼環境ソリューション公式HP(https://www.kobelco-eco.co.jp/process_equipment/pdf/product/filter_dryer.pdf)
製品の粉体回収率が99.5%以上を誇る全量回収型フィルタードライヤを取り扱っています。緩やかな傾斜をつけておりろ過しやすい形状になっていますが、傾斜のない従来型と同じスペースに設置可能。また振動源にはオイルフリーのエアバイブレータを採用しているため、防爆エリアやクリーンルームでも利用できるのが強みです。
引用元:イプロス(https://ls.ipros.jp/product/detail/2000320631/)
日鉄ステンレスグループの一員として、高品質なステンレス製品を扱っています。ニツセン事業部でははろ過装置の開発製造も行っており、多機能ろ過装置「WDフィルター」を開発。1台で撹拌ろ過からケーキ洗浄、脱水、乾燥、排出まで自動で行ってくれます。密閉仕様になっているためコンタミネーションを防止でき、有害物質や食品などのろ過乾燥にもおすすめです。
引用元:日本化学機械製造HP(https://www.nikkaki.co.jp/products/detail/69)
医薬向け小型加圧濾過機は、医薬や化粧品、機能性食品などの研究や製造を行う企業におすすめです。小ロット生産や試作生産に向いており、リーズナブルな価格で機器の導入が可能。密閉状態でろ過から乾燥まで行えるうえ、完全密閉状態のままケーキ排出も行えます。さらに可搬式で操作も簡単。クリーンルームへの導入も可能です。
引用元:IHI HP(https://www.ihi.co.jp/separator/products/leaf/)
陸上機械から航空・宇宙分野まで幅広く手がけるIHIが開発したリーフフィルターは、全自動かつ無人運転ができるろ過乾燥機です。特殊な残液ろ過機構により、スラリーを余すことなく全量ろ過することができ、生産性の向上に役立ちます。
引用元:ユーロテックHP(https://www.eurotec.co.jp/RF/RF.html)
ロールフィットは、脱水したケーキを真空ポンプで吸引しながら乾燥するろ過乾燥機です。低温で乾燥できるため、熱に弱い製品や熱に敏感な製品を乾燥したい際に適しています。廃熱利用もできるほか、従来型の圧搾機を改造して設置することもできるので、コスト削減に効果的です。
引用元:流機エンジニアリングHP(https://www.ryuki.com/products/products-667/)
プリーツドライヤー脱乾は、オートメーション化されたオールインワンのろ過乾燥機。凝集剤やろ過助剤も必要とせず、フィルター交換のみで固液分離から脱水乾燥まで行えます。高濃度スラリー液にも対応でき、先端粉体材料の乾燥に適しています。
引用元:大川原製作所公式HP(https://www.okawara.co.jp/products/104/)
大川原製作所の「FVドライヤー」は、医薬品や化粧品、機能性食品など、厳しい衛生管理や高品質が求められる分野での利用に適した多機能型ろ過乾燥機です。
従来、ろ過や洗浄後には別の機械を用いて乾燥工程を行う必要がありましたが、「FVドライヤー」では全てのプロセスを1台で完結可能。これにより、作業工程を簡略化し、製造時間の短縮と運用コストの削減を同時に実現します。完全密閉状態での作業が可能なため、コンタミ防止に優れ、クリーンルーム内での使用にも対応しています。医薬・食品業界の研究者や製造担当者にとって、効率的で清潔な生産プロセスを支援する装置だといえるでしょう。
引用元:イプロスものづくり(https://www.ipros.jp/product/detail/2001159987)
エッペンドルフ・ハイマック・テクノロジーズが提供する「多機能型ろ過乾燥機」は、加圧ろ過、混合、乾燥を1台で実現する革新的な装置です。従来の複数機器を使用した工程を統合することで、時間とコストを大幅に削減。密閉構造によるコンタミ防止とGMP準拠のサニタリー仕様により、医薬品や高機能材料などの研究開発や生産に適しています。
少量生産からスケールアップまで対応可能で、メンテナンス性にも優れた設計は、長期運用を視野に入れた製造環境に適した選択肢となるでしょう。高品質な製品製造を支援するこの装置の詳細は、ぜひこちらの記事をご覧ください。
半導体や各種薬品、食品など、自社商品の研究開発を目的とした工業用乾燥機には、様々なタイプが存在します。
ここでは代表的な5タイプについて、簡易的な比較表にまとめています。自社にはどのタイプが最適なのか、検討をしてみてください。
振動乾燥機
振動乾燥機はドラム型は缶体内に原料を投入し振動を行い、原料の流動化・乾燥を行う乾燥装置です。 |
攪拌乾燥機
攪拌式の乾燥機は、本体内部にあるパドルや羽根により原料を攪拌し、乾燥を行うタイプの乾燥機です。 |
真空回転乾燥機 (コニカルドライヤー) 真空回転乾燥機は、本体部分を密閉して減圧を行い、真空状態を作り出して原料を乾燥する構造の乾燥装置です。 |
箱型棚式 乾燥機 箱型棚式乾燥機はトレイに乾燥物を配置し、乾燥を行う構造の乾燥装置です。 |
流動層乾燥機
流動層乾燥機にはさまざまな形状があり、回転運動や振動、熱風などを利用し乾燥を行います。 |
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材料適⽤ 範囲 様々な種類・状態の材料に対応をしてるか。凝集性・付着性のある材料、水分量の多い材料、を苦手とする乾燥機も。 |
広い 幅広く対応 本体部分は真空状態になるため、様々な材料に対応。また、外に空気が漏れないため、人体に有害なものやナノ粒子状なども対応可能です。 |
広い 幅広く対応 本体部分は閉じられた状態になるため、様々な材料に対応。 |
広い 幅広く対応 本体部分は真空状態になるため、様々な材料に対応。 |
狭い 凝集性・付着性のある材料は苦手 攪拌が行われないため、凝集性・付着性のある材料に適用しない。 |
狭い 凝集性・付着性のある材料不可 攪拌が行われないため、凝集性・付着性のある材料に適用しない。また、水分を多量に含んだものも苦手とする。 |
適⽤量
一度に乾燥を行う材料の適用量はどうか。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩
材料を水平に並べる構造上、大量の材料を乾燥させる際には広いスペースが必要となる。 |
大
大量の材料の乾燥に適用したタイプの乾燥機。 |
粒⼦破損
材料の粒子を破壊せずに乾燥ができるか。物理的な摩擦が少ないものが好ましい。 |
少ない
振動による攪拌のため、機器による摩擦を発生させない。 |
有り
攪拌の際に機器による摩擦が発生しやすい。 |
少ない
回転による攪拌のため、機器による摩擦を発生させない。 |
少ない
攪拌を行わないため、機器による摩擦を発生させない。 |
有り
攪拌の際に機器による摩擦が発生しやすい。 |
加熱温度
関節加熱の温度が高いほど乾燥速度は早まるが、内部構造が複雑な機器の場合、熱膨張の影響を受けやすいため、制限がかかる。 |
高温域 (250度以下) 内部構造がシンプルなため、高温での過熱が可能。 |
中温域 (190度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
中温域 (190度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
高温域 (250度以下) 内部構造がシンプルなため、高温での過熱が可能。 |
低温域 (160度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
コンタミ 発⽣ リスク 乾燥機の内部での摩擦により、コンタミが発生するリスクがあるか。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
高い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こるため、コンタミが発生するリスクが高い。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
高い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こるため、コンタミが発生するリスクが高い。 |
洗浄時間
乾燥を行うごとに洗浄が必要な工業用乾燥機。内部構造が複雑な場合、解体が必要となるため、洗浄時間が長くなる。 |
短い
内部構造がシンプルなため、洗浄時間が短い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
短い
内部構造がシンプルなため、洗浄時間が短い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
消耗 部品 攪拌に羽を使用している、摩擦を起こすための部品が多い乾燥機の場合、消耗品の交換が必要となる。 |
少ない
消耗品はほとんどない。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
少ない
消耗品はほとんどない。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
特⻑ | 上記項⽬に幅広く対応した上で、粒⼦がダマにならない | 最も⼀般的な形式のため使い慣れている研究者が多い | 高真空下で低温乾燥が可能なため、熱に弱い原料に向いている | 食品乾燥など攪拌が必要のないものに 向いている | 大量の原料の乾燥に適している |
代表的な 製品(※) |
中央化工機
VU型振動乾燥機 ![]() 引用元:中央化工機HP |
ヤスジマ
YVD真空撹拌乾燥機 ![]() ヤスジマHP |
徳寿工作所
真空回転乾燥機 WDV型 ![]() 徳寿工作所HP |
長門電機工作所
箱型棚式乾燥機 ![]() 引用元:長門電機工作所HP |
栗本鐵工所
流動層乾燥装置 ![]() 引用元:栗本鐵工所HP |
※タイプ別の代表的な製品の選出基準
「振動乾燥機」「攪拌乾燥機」「真空回転乾燥機」「箱型棚式乾燥機」「流動層乾燥機」⇒2022年3月23日時点で各タイプ名をGoogle検索した際、最上位に表示されるメーカーの商品。