金属粉は、金属を粉末状に加工したものをいいます。
一般的に金属は、火災の危険性はないと考えられているものの、金属粉の場合には表面積の割合が大きくなることから、熱伝導率が低くなり、酸化熱が蓄積されるため自然発火しやすい特性があります。
金属粉は、圧縮しながら金型に流し込んで固め、高温で焼き上げる製法で利用されており、精度の高い部品などに用いられています。そのため、日常生活に欠かせない精密機器で利用されることが多く、自動車や医療、エレクトロニクスなどの分野で活用されています。
消防法では「アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、マグネシウム以外の金属粉」を可燃性固体に指定しています。そのため、銅粉、ニッケル粉、目開き150マイクロメートルの網ふるいを通過するものが50%未満のものについては金属粉から除外されています。
特に酸化物と混合した場合には、加熱や衝撃、摩擦により発火するおそれがあり、水分やハロゲン元素の接触でも自然発火する恐れがあるため注意が必要です。
※参考元:e-gov法令検索
消防法(別表第一(第二条、第十条、第十一条の四関係))
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC1000000186
アルミニウム粉末はアルミニウムの金属粉で、金属の中でも燃焼熱が高く、表面積が大きいため、酸化しやすく可燃物に含まれます。
酸や水、アルコール、酸化剤などに触れると爆発を起こすため、混合・乾燥の際には注意が必要です。アルミニウム粉末が拡散すると粉塵爆発を起こすことがあるためその点にも留意しましょう。
亜鉛粉は亜鉛の金属粉で、灰青色の粉末です。水より比重が重く、酸やアルカリに溶ける性質を持っており、水素を発生させる物質です。
用途としては、構造物の塗料・顔料として錆止めに使われたり、遮音材や電子材料、火薬などに使われています。
アルミニウム粉と似た性質を持ちながらも危険性はやや低いとされていますが、粉塵爆発を起こす危険がある原料のため、乾燥機選びの際にはその点にも注意しましょう。
鉄粉は鉄の金属粉で、各種金属粉末の中で最も幅広く用いられている原料です。
鉄は固体状では燃焼しないものの、粉末状になると燃焼しやすくなり、この原理を用いたものとして使い捨てカイロなどが挙げられます。
水と接触すると発火する恐れや、粉塵爆発の危険が考えられるため、混合や攪拌の際に異物が混入しないか、乾燥の際には温度調節ができるかを確認する必要があります。
銅粉は銅の金属粉で、鉄粉・アルミニウム粉同様幅広く使われている金属粉です。
工業分野では、電解精製され電気銅として出荷されることがあり、機械部品などの粉末治金や電子部品、摩擦材量や車の部品などの原材料として使用されることが多い素材です。
消防法上の金属粉からは除外されていますが、混入による他原料への影響や温度・乾燥方法が適したものかに注意しながら乾燥機を選定しましょう。
金属粉はほとんどの乾燥機で対応が可能です。その形状や加工する量によって、乾燥機を選べば基本的には問題ありません。
ただし、摩擦を起こすことでコンタミが発生しやすい物質も多くあるため、可能な限りシンプルな構造となっている乾燥機を選ぶのが無難だと考えられます。また酸化物と混合した場合には、加熱や衝撃、摩擦により発火する可能性があるため、振動乾燥機や箱型乾燥機のように洗浄性の良い乾燥機の方が安心だといえます。
振動乾燥機の特徴について見る
箱型棚式乾燥機の特徴について見る
半導体や各種薬品、食品など、自社商品の研究開発を目的とした工業用乾燥機には、様々なタイプが存在します。
ここでは代表的な5タイプについて、簡易的な比較表にまとめています。自社にはどのタイプが最適なのか、検討をしてみてください。
振動乾燥機
振動乾燥機はドラム型は缶体内に原料を投入し振動を行い、原料の流動化・乾燥を行う乾燥装置です。 |
攪拌乾燥機
攪拌式の乾燥機は、本体内部にあるパドルや羽根により原料を攪拌し、乾燥を行うタイプの乾燥機です。 |
真空回転乾燥機 (コニカルドライヤー) 真空回転乾燥機は、本体部分を密閉して減圧を行い、真空状態を作り出して原料を乾燥する構造の乾燥装置です。 |
箱型棚式 乾燥機 箱型棚式乾燥機はトレイに乾燥物を配置し、乾燥を行う構造の乾燥装置です。 |
流動層乾燥機
流動層乾燥機にはさまざまな形状があり、回転運動や振動、熱風などを利用し乾燥を行います。 |
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材料適⽤ 範囲 様々な種類・状態の材料に対応をしてるか。凝集性・付着性のある材料、水分量の多い材料、を苦手とする乾燥機も。 |
広い 幅広く対応 本体部分は真空状態になるため、様々な材料に対応。また、外に空気が漏れないため、人体に有害なものやナノ粒子状なども対応可能です。 |
広い 幅広く対応 本体部分は閉じられた状態になるため、様々な材料に対応。 |
広い 幅広く対応 本体部分は真空状態になるため、様々な材料に対応。 |
狭い 凝集性・付着性のある材料は苦手 攪拌が行われないため、凝集性・付着性のある材料に適用しない。 |
狭い 凝集性・付着性のある材料不可 攪拌が行われないため、凝集性・付着性のある材料に適用しない。また、水分を多量に含んだものも苦手とする。 |
適⽤量
一度に乾燥を行う材料の適用量はどうか。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩
材料を水平に並べる構造上、大量の材料を乾燥させる際には広いスペースが必要となる。 |
大
大量の材料の乾燥に適用したタイプの乾燥機。 |
粒⼦破損
材料の粒子を破壊せずに乾燥ができるか。物理的な摩擦が少ないものが好ましい。 |
少ない
振動による攪拌のため、機器による摩擦を発生させない。 |
有り
攪拌の際に機器による摩擦が発生しやすい。 |
少ない
回転による攪拌のため、機器による摩擦を発生させない。 |
少ない
攪拌を行わないため、機器による摩擦を発生させない。 |
有り
攪拌の際に機器による摩擦が発生しやすい。 |
加熱温度
関節加熱の温度が高いほど乾燥速度は早まるが、内部構造が複雑な機器の場合、熱膨張の影響を受けやすいため、制限がかかる。 |
高温域 (250度以下) 内部構造がシンプルなため、高温での過熱が可能。 |
中温域 (190度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
中温域 (190度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
高温域 (250度以下) 内部構造がシンプルなため、高温での過熱が可能。 |
低温域 (160度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
コンタミ 発⽣ リスク 乾燥機の内部での摩擦により、コンタミが発生するリスクがあるか。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
高い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こるため、コンタミが発生するリスクが高い。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
高い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こるため、コンタミが発生するリスクが高い。 |
洗浄時間
乾燥を行うごとに洗浄が必要な工業用乾燥機。内部構造が複雑な場合、解体が必要となるため、洗浄時間が長くなる。 |
短い
内部構造がシンプルなため、洗浄時間が短い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
短い
内部構造がシンプルなため、洗浄時間が短い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
消耗 部品 攪拌に羽を使用している、摩擦を起こすための部品が多い乾燥機の場合、消耗品の交換が必要となる。 |
少ない
消耗品はほとんどない。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
少ない
消耗品はほとんどない。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
特⻑ | 上記項⽬に幅広く対応した上で、粒⼦がダマにならない | 最も⼀般的な形式のため使い慣れている研究者が多い | 高真空下で低温乾燥が可能なため、熱に弱い原料に向いている | 食品乾燥など攪拌が必要のないものに 向いている | 大量の原料の乾燥に適している |
代表的な 製品(※) |
中央化工機
VU型振動乾燥機 |
ヤスジマ
YVD真空撹拌乾燥機 |
徳寿工作所
真空回転乾燥機 WDV型 |
長門電機工作所
箱型棚式乾燥機 |
栗本鐵工所
流動層乾燥装置 |
※タイプ別の代表的な製品の選出基準
「振動乾燥機」「攪拌乾燥機」「真空回転乾燥機」「箱型棚式乾燥機」「流動層乾燥機」⇒2022年3月23日時点で各タイプ名をGoogle検索した際、最上位に表示されるメーカーの商品。