さまざまな用途で使われる乾燥機ですが、汚泥処理においてはどのように利用されているのか調査しました。汚泥処理に乾燥機を使用するメリットや導入する際のポイントをまとめています。
汚泥の海洋投棄の規制に伴い、増加している汚泥をどう処理するかが課題となっています。汚泥の多くは多量の水分を含んでいることから、これまで処分や資源化が難しいとされてきました。
けれど、乾燥機を活用することで汚泥に含まれる不要な水分が蒸発し、処理物の大幅な減量化が可能に。処理物の減量化により、廃棄物の処理費用やランニングコストの削減も実現できます。また、リンなどの有機質を含んでいる汚泥であれば、乾燥菌体肥料や副産複合肥料、汚泥肥料などとして有効利用することも可能です。
そのほかにも、乾燥後の汚泥を粉体ボイラーの燃料として活用したり、ペレットやブリケットにして販売することもできます。乾燥技術により処理に困っていた汚泥の活用の可能性が広がったことから、エコロジーの観点からも乾燥機は有用な設備と言えるでしょう。
直接乾燥方式は、汚泥に直火や超高温の熱風を吹き込んで汚泥に含まれる水分を蒸発・乾燥させる方法です。間接乾燥方式は汚泥を間接的に加熱・乾燥させる方法で、汚泥に含まれる有機質を損なうことなく乾燥汚泥をつくれるのが特徴。有機質を含む乾燥汚泥は乾燥菌体肥料や副産複合肥料などとして再資源化できるため、乾燥汚泥を農業で活用したいなら間接乾燥方式が適しています。
汚泥の乾燥方法には減圧乾燥も活用されています。減圧乾燥とは脱水汚泥と廃棄用の油を混ぜ合わせ減圧下で熱を加えることによって、水分をスピーディに蒸発させる方法です。乾燥過程のなかで得られる蒸発水分は、汚泥乾燥機の温度を高める用途に再利用されます。高温処理を施すため殺菌性に優れている、放熱性が良くない環境下でも自己発熱特性がある、造粒汚泥乾燥よりも比較的保有している熱量が高いといった点が特徴です。
電気・ガスなどの燃料を用いたバーナーやヒーターなどで加熱し、送風機を用いて熱風を当てながら乾燥する方法です。私たちの身近な生活の中でも、熱風乾燥は衣類乾燥機・食器乾燥機など幅広い製品で活用されています。一般的な乾燥方法のひとつで、比較的シンプルな仕組みと言えるでしょう。コストが抑えられる、温度調節が容易などのメリットがありますが、汚泥の状態によっては乾燥までに時間を要するケースもあります。
発酵熱乾燥とは省エネルギー性に優れ、比較的コストを抑えた乾燥方法と言われています。発酵熱とは微生物が有機物を食し、それを分解する際につくり出される熱のことです。微生物が活発な環境下であれば、微生物が繁殖することで大きな発酵熱を生み出せるでしょう。薪などで火を起こしているわけではないため、火災トラブルⅡ発展する心配もありません。微生物の力だけに頼っているため、環境にも優しい乾燥方法と言えます。
太陽や風など自然の力を活かした乾燥方法で「天日乾燥」と呼ぶこともあります。汚泥の上澄み水の排除・ろ過によって汚泥の含水率を低下させた後に、自然乾燥を行うケースが一般的です。自然のエネルギーしか活用していないので、機械を用いた脱水よりも使用電力量を大幅に削減できるといったメリットがあります。ただ天候に左右されやすく、完全に脱水するまでに時間がかかるといったデメリットもあるので注意が必要です。
多くの場合、汚泥は粘着性をもっており、その粘着性を上手く活用した乾燥方法です。汚泥を乾燥粒子に薄く塗り、転動造粒した汚泥を厚い熱で乾燥させる仕組みとなります。基本的に水分だけを蒸発させる方法となるため、脱水汚泥に含まれている有機物を分解することはありません。炭化製品よりも熱量が高い傾向にあり、含水率自体は低いのでニオイもほとんどないでしょう。乾燥後に長時間保存したとしても変質しないなどの特徴があります。
下水汚泥を乾燥と炭化の中間ほどの条件で脱水性に優れた状態に改質したうえで乾燥させる方法です。一般的に改質・冷却装置や脱水・乾燥装置、排水処理装置が活用されており、最終的には粒状の燃料製品として生まれ変わらせることが可能。またメタンガスを回収することで、改質用ボイラの補助燃料として活用されることも。脱水汚泥と比べて発熱量は変わることなく、また他の炭化燃料製品・汚泥乾燥燃料製品などと比較しても安全性に大きな違いはありません。
汚泥処理に使われる乾燥機にはさまざまな種類があるため、自社のニーズや使用状況に合った乾燥機を選ぶことが大切です。
乾燥機の乾燥方式をはじめ、設置場所やサイズ、価格、処理能力、扱いやすさなど、自社が乾燥機に求めるものを整理し、メーカーとも相談しながら適切な製品を検討しましょう。乾燥機の導入目的がランニングコストの削減であれば、熱効率の高い乾燥機がおすすめ。汚泥の再資源化が目的なら、有機質を含んだまま処理できる乾燥機を選ぶと良いでしょう。
また、安心して使い続けられるようにメンテナンスのしやすさも重要です。自社に合った乾燥機を導入するためにも、製品の相談から提案、オーダーメイド、アフターメンテナンスなど、顧客の細かなニーズに対応してくれるメーカーをおすすめします。
半導体や各種薬品、食品など、自社商品の研究開発を目的とした工業用乾燥機には、様々なタイプが存在します。
ここでは代表的な5タイプについて、簡易的な比較表にまとめています。自社にはどのタイプが最適なのか、検討をしてみてください。
振動乾燥機
振動乾燥機はドラム型は缶体内に原料を投入し振動を行い、原料の流動化・乾燥を行う乾燥装置です。 |
攪拌乾燥機
攪拌式の乾燥機は、本体内部にあるパドルや羽根により原料を攪拌し、乾燥を行うタイプの乾燥機です。 |
真空回転乾燥機 (コニカルドライヤー) 真空回転乾燥機は、本体部分を密閉して減圧を行い、真空状態を作り出して原料を乾燥する構造の乾燥装置です。 |
箱型棚式 乾燥機 箱型棚式乾燥機はトレイに乾燥物を配置し、乾燥を行う構造の乾燥装置です。 |
流動層乾燥機
流動層乾燥機にはさまざまな形状があり、回転運動や振動、熱風などを利用し乾燥を行います。 |
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材料適⽤ 範囲 様々な種類・状態の材料に対応をしてるか。凝集性・付着性のある材料、水分量の多い材料、を苦手とする乾燥機も。 |
広い 幅広く対応 本体部分は真空状態になるため、様々な材料に対応。また、外に空気が漏れないため、人体に有害なものやナノ粒子状なども対応可能です。 |
広い 幅広く対応 本体部分は閉じられた状態になるため、様々な材料に対応。 |
広い 幅広く対応 本体部分は真空状態になるため、様々な材料に対応。 |
狭い 凝集性・付着性のある材料は苦手 攪拌が行われないため、凝集性・付着性のある材料に適用しない。 |
狭い 凝集性・付着性のある材料不可 攪拌が行われないため、凝集性・付着性のある材料に適用しない。また、水分を多量に含んだものも苦手とする。 |
適⽤量
一度に乾燥を行う材料の適用量はどうか。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩〜⼤
様々なサイズの乾燥機をメーカーが用意している。 |
⼩
材料を水平に並べる構造上、大量の材料を乾燥させる際には広いスペースが必要となる。 |
大
大量の材料の乾燥に適用したタイプの乾燥機。 |
粒⼦破損
材料の粒子を破壊せずに乾燥ができるか。物理的な摩擦が少ないものが好ましい。 |
少ない
振動による攪拌のため、機器による摩擦を発生させない。 |
有り
攪拌の際に機器による摩擦が発生しやすい。 |
少ない
回転による攪拌のため、機器による摩擦を発生させない。 |
少ない
攪拌を行わないため、機器による摩擦を発生させない。 |
有り
攪拌の際に機器による摩擦が発生しやすい。 |
加熱温度
関節加熱の温度が高いほど乾燥速度は早まるが、内部構造が複雑な機器の場合、熱膨張の影響を受けやすいため、制限がかかる。 |
高温域 (250度以下) 内部構造がシンプルなため、高温での過熱が可能。 |
中温域 (190度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
中温域 (190度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
高温域 (250度以下) 内部構造がシンプルなため、高温での過熱が可能。 |
低温域 (160度以下) 内部構造が複雑なため、200度以上を出すのが難しい。 |
コンタミ 発⽣ リスク 乾燥機の内部での摩擦により、コンタミが発生するリスクがあるか。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
高い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こるため、コンタミが発生するリスクが高い。 |
低い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こりにくく、コンタミが発生するリスクは低い。 |
高い
乾燥機での攪拌による摩擦が起こるため、コンタミが発生するリスクが高い。 |
洗浄時間
乾燥を行うごとに洗浄が必要な工業用乾燥機。内部構造が複雑な場合、解体が必要となるため、洗浄時間が長くなる。 |
短い
内部構造がシンプルなため、洗浄時間が短い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
短い
内部構造がシンプルなため、洗浄時間が短い。 |
長い
内部構造が複雑なため、洗浄時間が長い。 |
消耗 部品 攪拌に羽を使用している、摩擦を起こすための部品が多い乾燥機の場合、消耗品の交換が必要となる。 |
少ない
消耗品はほとんどない。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
少ない
消耗品はほとんどない。 |
多い
消耗品が多く、定期的な交換が必要。 |
特⻑ | 上記項⽬に幅広く対応した上で、粒⼦がダマにならない | 最も⼀般的な形式のため使い慣れている研究者が多い | 高真空下で低温乾燥が可能なため、熱に弱い原料に向いている | 食品乾燥など攪拌が必要のないものに 向いている | 大量の原料の乾燥に適している |
代表的な 製品(※) |
中央化工機
VU型振動乾燥機 |
ヤスジマ
YVD真空撹拌乾燥機 |
徳寿工作所
真空回転乾燥機 WDV型 |
長門電機工作所
箱型棚式乾燥機 |
栗本鐵工所
流動層乾燥装置 |
※タイプ別の代表的な製品の選出基準
「振動乾燥機」「攪拌乾燥機」「真空回転乾燥機」「箱型棚式乾燥機」「流動層乾燥機」⇒2022年3月23日時点で各タイプ名をGoogle検索した際、最上位に表示されるメーカーの商品。